現在物(読み)ゲンザイモノ

デジタル大辞泉 「現在物」の意味・読み・例文・類語

げんざい‐もの【現在物】

能の分類の一。歴史上男性が存命中の姿で、直面ひためんシテとして登場するもの。男舞をまうか、切組きりくみを見せる。現在男物

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精選版 日本国語大辞典 「現在物」の意味・読み・例文・類語

げんざい‐もの【現在物】

〘名〙 能楽で、歴史上の人物主人公とし、シテは直面(ひためん)で、男舞を舞い、または切組をする。「安宅」「盛久」など。現在男物。

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改訂新版 世界大百科事典 「現在物」の意味・わかりやすい解説

現在物 (げんざいもの)

能の種別の名。〈現在能〉のうち,主人公が現実の男性である能を指す。面を掛けないので〈直面(ひためん)物〉とも言い,五番立分類(江戸時代の1日の番組編成基準に基づく分類法)の4番目に置かれる〈四番目物〉の一つである。男舞(おとこまい)を舞う《盛久》《小督(こごう)》,武士同士の斬合いを見せる《忠信》《夜討曾我》《橋弁慶》,芸能尽しの《放下僧(ほうかぞう)》《望月》などがあり,人情的内容の《俊寛》《景清》も,面を掛けるが,これに含まれる。この2曲や《安宅(あたか)》《鉢木》など,歌舞伎浄瑠璃に影響を与えた作品も少なくない。なお,現在能と同意に用いる広義用法もあったが,誤解を避けるため今日では上記の狭義の意に限定するのが普通であり,〈現在物〉の呼称自体もあまり用いられなくなっている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「現在物」の意味・わかりやすい解説

現在物
げんざいもの

能の曲の分類用語。幽霊の登場する夢幻能に対し,主人公 (シテ) が現実に生きた人物として登場する能。シテが直面 (ひためん) ,すなわち素顔の男性の武人役で,男舞を舞うか,斬組 (きりくみ) といわれる戦い場を演じるのを原則とする。『安宅』『小袖曾我』『小督 (こごう) 』『夜討曾我』『橋弁慶』『忠信』など。一般に字義どおり広い意味に解されるようになり,『熊野』『自然居士』『俊寛』『弱法師 (よろぼし) 』などの類をもいう。五番立の番組で,4番目に演じられる,いわゆる四番目物 (→雑物 ) の一種。

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世界大百科事典(旧版)内の現在物の言及

【四番目物】より

…現行曲は各流とも約90曲。曲種によって《高野物狂》《蘆刈》《土車》等の男物狂と《百万》《桜川》《三井寺》等の女物狂を総括して〈狂乱物〉,《船橋》《通小町》《阿漕(あこぎ)》等の〈執心物〉,《三笑(さんしよう)》《邯鄲(かんたん)》《天鼓(てんこ)》などの〈遊楽物〉,《鉢木》《盛久》《安宅》等の〈現在物〉などに分類するが,《錦木》《松虫》《梅枝(うめがえ)》等を〈執心遊楽物〉,《摂待(せつたい)》《景清》《鳥追舟》等を〈人情物〉とすることもある。またシテの役柄・使用面から《自然居士(じねんこじ)》《花月》《東岸居士(とうがんこじ)》を〈喝食物(かつしきもの)〉,働事(はたらきごと)から《葵上》《道成寺》《黒塚》(観世流では《安達原》)を〈祈り物〉と分類することもある。…

※「現在物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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