球果植物(読み)きゅうかしょくぶつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「球果植物」の意味・わかりやすい解説

球果植物
きゅうかしょくぶつ

一般的に、針葉樹とよばれる植物をさし、葉に特徴のあるものが多く、松柏(しょうはく)植物ともいう。広義にはイチイ科も含むが、狭義にはイチイ科、マキ科、イヌガヤ科のいわゆる球果が液果状になる3科を除く針葉樹をいう。低木または高木で、セコイアスギSequoia sempervirensのように100メートルの巨木となるものもある。材は二次木部がよく発達し、仮道管と仮道管繊維が多く、柔組織が少ないので堅い材をつくる。葉は針状でときに鱗片(りんぺん)状になる。葉脈は普通1本で、葉の裏には気孔が密集して白くみえる条線をもつものが多い。葉へ入る維管束は、茎の維管束環(中心柱)にある一つの葉隙(ようげき)(茎から葉が分岐するときに茎の維管束環に残す欠所)から1本か2本の葉跡(茎から分かれて葉に入る維管束)となって出る。木部や葉には樹脂道(じゅしどう)があり、傷をつけると樹脂(やに)を分泌する。この樹脂の化石はこはくとして珍重される。葉の樹脂道の分布のようすは属を分類する特徴として重要である。花は雌雄異花、1本の軸を中心に多数の花をつけて球花をつくる。雄の球花は包鱗(ほうりん)の内側に2個から数個の葯(やく)をつける。花粉は2個の気嚢(きのう)(袋状や帯状の付属物)をもち、風媒花である。たとえばアカマツでは早春、黄色の花粉を風にのせて飛ばす。花粉は裸出する胚珠(はいしゅ)の花粉室に入り、9月ごろ花粉管を伸ばして受精する。花粉管内の精核は繊毛がなく運動性をもたない。雌の球花は包鱗のほかに胚珠をつける種鱗があり、ともに胚珠の保護器官となっている。珠皮は1枚のみである。受精後、種子が熟すと木化した包鱗が球果をつくる。包鱗が開いて種子が散ったものが「まつぼっくり」で、細工物などにも利用される。種子は扁平(へんぺい)で、多くは翼をもち風で散布される。子葉は2枚から数枚を生じるものまであるが、種類により、その数は一定している。

 球果植物は古生代末の石炭紀に地球上に出現し、中生代ジュラ紀にもっとも繁栄した植物で、5科450種ほどが現生している。ナンヨウスギ科以外はすべて日本に分布し、固有種も多い。マツ科はおもにアジアと北アメリカに分布し、モミAbies firmaやカラマツLarix kaempferiは日本の固有種で高山に生育する。スギ科は東アジアと北アメリカに分布し、有用材のスギCryptomeria japonicaは日本の固有種である。ヒノキ科は南半球と北半球に半数ずつ、ほぼ全世界に22属が分布する。日本にはヒノキ属、アスナロ属、クロベ属、ビャクシン属、ネズミサシ属が自生する。ヒノキChamaecyparis obtusaは日本固有の有用材である。コウヤマキ科は1属1種の日本特産種コウヤマキSciadopitys verticillataのみで福島県から宮崎県まで分布している。

[杉山明子]

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改訂新版 世界大百科事典 「球果植物」の意味・わかりやすい解説

球果植物 (きゅうかしょくぶつ)
Coniferophyta

マツ,スギ,ヒノキ,マキなど一般に球果をつくる植物群の総称で,ソテツ類,グネツム(マオウ)類とともに裸子植物を三分する分類群。コルダイテス目,球果目,イチイ目を含み,広義にはイチョウ目を加えることもある。球果綱とすることもある。葉は単葉,1本の葉脈をもった針状,線形または鱗片状,あるいは平行脈をもった笹葉状である。材は仮道管が多い多木質で緻密。種子は左右相称形。胚珠は包鱗に腋生(えきせい)する種鱗上に生ずる。このような種鱗複合体が集まって球果(胞子囊穂)をつくる。イチイ目,イチョウ目は球果をつくらず,胚珠は茎頂に単生する。現生の球果目,イチイ目の樹幹の多くは有用材で,建造物,船舶,運搬車両などに利用される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「球果植物」の意味・わかりやすい解説

球果植物
きゅうかしょくぶつ

針葉樹」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の球果植物の言及

【植物】より

…古生代から中生代にかけて繁栄した群で,現生はイチョウ1種。球果植物門 茎がよく発達した木本で,真正中心柱をもち,材は硬木質。葉は針状のことが多く,胞子囊は軸に密集してつき,胞子囊穂をつくる。…

【針葉樹】より

広葉樹の対語で,針状の葉をもつ樹木という意味ではあるが,実際には裸子植物の針葉樹類(球果植物類)に属する樹木を総称する。したがって,イチョウやソテツは含まないが,葉の幅は広くてもナギは含まれる。…

※「球果植物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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