生きがい療法(読み)いきがいりょうほう

百科事典マイペディア 「生きがい療法」の意味・わかりやすい解説

生きがい療法【いきがいりょうほう】

(がん)や難病患者などに生きがいを持たせることによって,心理的な不安や死の恐怖を克服し,自然治癒力を高めようという療法森田正馬が1921年ごろに提唱した神経症の治療理論〈森田療法〉を理論的根拠とし,岡山県倉敷市の柴田病院の伊丹仁朗医師によって提唱された。その後,同医師は全国どこでも実践ができる通信教育システムを開発,1984年同医師を代表とする〈生きがい療法実践会〉が発足した。 同会は,〈今日1日を,生きる目標に打ち込んで生きる〉〈人のためになることを実践する〉などのガイドラインに基づいたプログラムを作成し,登山や学習会など積極的な活動を行っている。1989年,この療法の一環として行われた,癌患者7人によるアルプスの最高峰モン・ブラン(4810m)登山は大きな注目を集め,7人のうち3人が登頂に成功した。 登山とともに同会が力を入れる治療法に〈ペイントイン〉と呼ばれる療法がある。これは,闘病者が鳥や魚,森林などをモチーフに,共同で1枚の巨大な絵を描くもので,その過程の共同作業を通して,生きがいを見出そうという意図を持つ。〈米ホスピタル・アート財団〉の活動をモデルに始められた。〈ペイント・イン〉は海外にも広がり,1994年には北京の病院で,1996年7月にはパリの病院で,日本の患者と当地の患者とが共同制作を行い,大きな成果を上げた。こうした国際交流はその後も活発に行われている。 また,伊丹医師は〈笑い効果〉にも注目し,患者が笑い話をつくり,人前でそれを話すことによって,達成感を得ようという試みも実践している。→精神療法クオリティ・オブ・ライフ
→関連項目芸術療法代替療法

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

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