産婆術(読み)さんばじゅつ(英語表記)maieutikē

精選版 日本国語大辞典 「産婆術」の意味・読み・例文・類語

さんば‐じゅつ【産婆術】

〘名〙
産婆仕事
ボール紙の皇帝万歳(1927)〈久野豊彦〉「私立病院の産婆術と一緒に、堅く、警察取締られてきたのである」
② (maieutikē の訳語) ギリシアの哲学者ソクラテスが用いた問答法問答を通じて、相手の知識のあいまいさや矛盾を指摘し、無知自覚を呼び起こすことによって、正しい認識を生み出すように導く過程を産婆の仕事にたとえて名づけたもの。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「産婆術」の意味・読み・例文・類語

さんば‐じゅつ【産婆術】

《〈ギリシャmaieutikēソクラテスの問答法のこと。この方法は相手が自ら真理に到達するのを助けるだけであるとし、自分の母の職業である産婆の仕事にたとえて名づけたもの。→問答法

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「産婆術」の意味・わかりやすい解説

産婆術
さんばじゅつ
maieutikē

ソクラテスの対話の方法には,消極的側面であるソクラテス的反語エイロネイア eirōneia (→アイロニー ) と,積極的側面としての産婆術が知られる。前者は対話の相手からロゴス (論説) を引出し,無知の自覚,アポリアへと誘い込むソクラテス一流の無知を装う態度であり,後者は相手の提出した論説や概念規定を,質問を重ねることにより吟味しつつ当人の意識していなかった新しい思想を産み出させる問答法である。彼はみずから知恵を産む力はないが,他の人々がそれを産むのを助けてその知恵の真偽を識別することはできるとして,自己の活動を母ファイナレテの仕事であった産婆になぞらえて,これを産婆術と呼んだ (プラトンテアイテトス』) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android