田中茂穂(読み)たなかしげほ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「田中茂穂」の意味・わかりやすい解説

田中茂穂
たなかしげほ
(1878―1974)

動物学者。高知県生まれ。1904年(明治37)東京帝国大学理科大学動物学科を卒業。同学科の講師、助教授を経て、1938~1939年(昭和13~14)教授。また同期間、同大学三崎臨海実験所長を兼任。日本における魚類分類学の草分けで、約170種の新種魚類を記載、うち約90種が現在も認められている。また、アメリカ合衆国スタンフォード大学の魚類学の大家ジョルダンらとの共著『日本産魚類カタログ』(1913)で、日本産魚類を初めて系統的にまとめ上げた。1926~1927年スタンフォード大学に留学、以後、種内変異を重視し、数多くの標本の収集に努めた。これら分類学上の諸問題を論じた報文も多数ある。一方で、分類学における厳密な記載と図示の重要性を認識し、『日本産魚類図説』シリーズ(1911~1930)を刊行。このほかC・ダーウィン著書翻訳や、多くの啓蒙(けいもう)的著作がある。また、多年にわたり後進の育成に尽くすとともに、『動物学雑誌』の編集委員を務めるなど、日本の動物学の発展に寄与した。

[佐藤寅夫]

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「田中茂穂」の解説

田中茂穂 たなか-しげほ

1878-1974 大正-昭和時代の動物学者。
明治11年8月16日生まれ。昭和13年母校東京帝大の教授。ジョルダンらとの共著「日本魚類目録」で,はじめて日本産魚類を系統的に分類。また魚類方言を多数採集し「実用魚介方言図説」にまとめた。昭和49年12月24日死去。96歳。高知県出身。

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