田沢稲舟(読み)たざわ・いなぶね

朝日日本歴史人物事典 「田沢稲舟」の解説

田沢稲舟

没年:明治29.9.10(1896)
生年:明治7.12.28(1874)
明治時代小説家本名錦。山形県鶴岡の外科医清と理財家信の長女。共立女子職業学校(共立女子大)で日本画を学ぶが『以良都女』に投稿していた縁で,複数の女性関係を持つ山田美妙と恋に落ち,傷つき苦しむ。新作浄瑠璃の習作期を経て『医学修行』『しろばら』(ともに1895年)で注目される。その後美妙と結婚するが3カ月で無惨に破綻。ようやく自己の文学世界をつかんだ『五大堂』が遺作となる。恋愛・結婚・離婚・死への急進過程は美妙への激しい非難攻撃となり,美妙は文壇から排斥された(稲舟事件)。その文学および哀切な生涯は女の性を弄ぶ男に対する抗議と批判を内在させている。<著作>細矢昌武校訂『田沢稲舟全集』全1巻<参考文献>大野茂男『論攷田沢稲舟』

(渡辺澄子)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「田沢稲舟」の解説

田沢稲舟 たざわ-いなぶね

1874-1896 明治時代の小説家。
明治7年12月28日生まれ。山田美妙に師事,明治28年「医学修業」「しろばら」で文壇にみとめられる。同年美妙と結婚したが3ヵ月で離婚。明治29年9月10日死去。23歳。山形県出身。本名は錦(きん)。遺稿に「五大堂」など。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

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