田畑永代売買の禁(読み)でんぱたえいたいばいばいのきん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「田畑永代売買の禁」の意味・わかりやすい解説

田畑永代売買の禁
でんぱたえいたいばいばいのきん

江戸幕府が寛永 20 (1643) 年に定めた百姓所持の田畑の永代売買の禁止。この種の禁止はすでに戦国時代の分国法にみられる。禁止の理由は財産家の百姓が田畑の兼併によってますます富裕となり,貧窮の百姓が田畑を売払うことによりますます困窮するのを防ぐことにあったが,発令の直接の契機前年の大飢饉にあった。しかし,わずか4ヵ条の処罰規定だけであったし,江戸時代を通じて田畑の質入れは認められていたから,事実上の田畑の移動は広く行われた。この禁令は寛保2 (1742) 年制定の『公事方御定書』にも引継がれたが,翌々年にはその刑はきわめて軽くされた。しかし,幕府は農民心理に及ぼす影響を顧慮して,幕末までついにこの禁令を廃止しなかった。諸藩でもこの禁止にならって同種の禁令を設け,加賀藩ではすでに元和1 (15) 年に発布しているが,明治政府は明治5 (1872) 年に廃止した。 (→地租改正 )  

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