田舎芝居(読み)いなかしばい

精選版 日本国語大辞典 「田舎芝居」の意味・読み・例文・類語

いなか‐しばい ゐなかしばゐ【田舎芝居】

[1] 〘名〙
近世三都江戸大坂京都)の俳優が、三都以外の地方で興行する芝居の称。また、広くいなか回りの役者が演ずる芝居をもいう。
※評判記・役者口三味線(1699)京「十二三よりみがきたてられ、田舎(イナカ)しばゐをへめぐり、次第あがりにげいをしあげ、京大坂のしばゐへ出るもあり」
農夫などの素人が、鎮守祭や豊年祭などの余興に催す芝居。
③ 芝居で、不完全な設備や不出来な演技などが目に余る場合に、これをののしっていう語。
[2] 洒落本。一冊。万象亭(まんぞうてい)(=森島中良)作。天明七年(一七八七)刊。越後国妻有郷南鐙坂村の縮市に催される旅芝居興行を、方言や色模様を盛りこんで面白おかしく描いたもの。江戸の遊里遊女のうがちに終始する洒落本の反動として書かれた作品で、滑本「道中膝栗毛」のさきがけともなった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「田舎芝居」の意味・読み・例文・類語

いなか‐しばい〔ゐなかしばゐ〕【田舎芝居】

田舎で催される素人の演劇
地方の小都市や村などで、旅回りの役者が演じる芝居。江戸時代、江戸・大坂・京都の三都の役者が修業のために地方で興行した場合もいう。
設備が不完全で演技もへたな芝居をののしっていう語。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「田舎芝居」の意味・わかりやすい解説

田舎芝居
いなかしばい

洒落本(しゃれぼん)、滑稽(こっけい)本。1787年(天明7)初版、1冊。1801年(享和1)改版、2冊。作者は万象亭(まんぞうてい)、竹杖為軽(たけづえすがる)を称した蘭学者(らんがくしゃ)森島中良(なから)。序文で、近年の洒落本が度を過ぎた写実に向かっているので、ここではもっぱら滑稽を趣向とすると、創作意図を述べ、越後(えちご)の寒村における田舎芝居の珍妙異風をつづっている。この趣向は遊里を舞台に、そこでの男女の生態を細かくうがつといった傾向の作品が氾濫(はんらん)し、すでに行き詰まりつつあった洒落本をふたたび滑稽の本道に戻そうとした作品といえる。改版の出現により、以後の滑稽本の方向が決定されたともいわれ、その意味で文学史的に重視される作品である。

[中野三敏]

『水野稔他編『洒落本大成 13』(1981・中央公論社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「田舎芝居」の解説

田舎芝居
(通称)
いなかしばい

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
日待遊月夜芝居
初演
明治8.3(東京・新富座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

デジタル大辞泉プラス 「田舎芝居」の解説

田舎芝居

古典落語の演目のひとつ。芝居ばなし。

出典 小学館デジタル大辞泉プラスについて 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android