田舎(読み)イナカ

デジタル大辞泉 「田舎」の意味・読み・例文・類語

い‐なか〔ゐ‐〕【田舎】

都会から離れた地方。「田舎から町に出てくる」
田畑が多く、のどかな所。人家が少なく、静かでへんぴな所。「便利になったとはいっても、まだまだ田舎だ」
生まれ故郷。郷里父母祖父母ふるさとについてもいう。「うち田舎四国の港町です」
(名詞に付き、接頭語的に用いて)素朴・粗暴・やぼなどの意を表す。「田舎料理」「田舎ふう」「田舎侍」
[類語](1)(2在郷ざいごう在所在地在方ざいかた近在田園ひな地方辺地辺境僻地へきち僻陬へきすう辺鄙奥地辺土ローカル片田舎鄙びる草深い/(3ふるさと国許くにもと故郷郷里在所生地家郷かきょう郷国郷関きょうかん故山郷土郷党生国生まれ故郷地元出生地出身地墳墓の地

でん‐しゃ【田舎】

《古くは「でんじゃ」とも》いなか。また、いなかの家。
「さしもの名物を―の塵になさん事」〈平家・七〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「田舎」の意味・読み・例文・類語

い‐なか ゐ‥【田舎】

〘名〙
① 都会から離れた土地、地方。都以外の所。また、人家が少なく、へんぴな所。在郷。鄙(ひな)
書紀(720)垂仁二年一〇月(北野本訓)「黄牛(あめうじ)田器(たつはもの)を負て田舎(ヰナカ)に将往(ゆ)く」
※伊勢物語(10C前)五八「ゐなかなりければ、田刈らんとて」
② 地方にある生まれ故郷、または、親などの出身地。郷里。「連休にいなかへ帰る」
※尋常小学読本(1887)〈文部省〉六「田舎の叔母を訪はんとて」
③ (名詞の上に付けて接頭語のように用いる) 田舎でよくありそうなさま、野卑、下品、粗暴などのさまにいう語。
※古事談(1212‐15頃)二「布衣之時、似田舎五位
※御湯殿上日記‐文明一四年(1482)一一月二日「御みやけいなか一か」
言継卿記‐天文一三年(1544)正月二九日「今朝広橋よりゐ中とて樽一」
※明治世相百話(1936)〈山本笑月〉甘党随喜の名代汁粉「甘党の随喜した汁粉の味、〈略〉御膳、田舎、小倉、塩餡乃至は白餡の上品まで」
[語誌](1)①は、中古以前は、都から離れた土地をいい、たとえば「伊勢物語‐五八」の例は、平安京の外にある長岡をさす。類義語「ひな」は畿外の地をいうが、次第に古語となった。
(2)「ゐなか」は、「みやこ」の対として、蔑視されていたとは限らない。上代のいわゆる両貫貴族の本貫の地、すなわち生産を営む場をさす場合には侮蔑性は少なく、都会的洗練を経ないものとしては、次第に、蔑称の意識が強まり、その意味での数多くの複合語をつくる。
(3)中世では京都郊外よりさらに外の地、また単に地方の意にも使われたらしい。

でん‐しゃ【田舎】

〘名〙 (古くは「でんじゃ」とも) いなか。また、いなかの家。
※菅家文草(900頃)一一・吉祥院法華会願文「須明年、予帰田舎
※中院本平家(13C前)七「くだし給て候し御琵琶をば、〈略〉いまはでんしゃのちりにまじへ」 〔史記‐蘇秦伝〕

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普及版 字通 「田舎」の読み・字形・画数・意味

【田舎】でんしや

いなか。〔抱朴子、疾〕傾倚申脚のを以て、妖(えうけん)標秀と爲し、風格端嚴なるを以て、田舍の朴(ぼくがい)(すなおで愚か者)と爲す。

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