甲斐(市)(読み)かい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「甲斐(市)」の意味・わかりやすい解説

甲斐(市)
かい

山梨県中部にある市。2004年(平成16)中巨摩(なかこま)郡竜王町(りゅうおうちょう)、敷島町(しきしままち)、北巨摩郡双葉町(ふたばちょう)が合併、市制施行して成立。北部は金ヶ岳(かながたけ)(1764メートル)、茅ヶ岳(かやがたけ)(1704メートル)が聳え、中・南部は甲府盆地の北西部を占める。北東甲府市との境を笛吹(ふえふき)川支流荒川が、南西の南アルプス市との境を釜無川(かまなしがわ)が南流する。JR中央本線、国道20号、52号が通り、中央自動車道双葉ジャンクションで中部横断自動車道と分岐する。

 縄文時代の遺跡は北部山間部に分布する。甲府盆地北部の荒川と貢(く)川の自然堤防上にある金の尾遺跡(かねのおいせき)は縄文中期と弥生(やよい)時代後期の集落遺跡で、方形周溝墓や円形周溝墓などが検出された。茅ヶ岳山麓の登美(とみ)台地南端に赤坂台古墳群がある。円墳と考えられる竜王2号墳からは金銅製馬具などが出土した。古代の天狗沢瓦窯跡(てんぐさわがようせき)では八葉素弁蓮華文の軒丸瓦などが焼成されている。

 鎌倉時代には八条院領篠原荘、山城松尾寺領志摩荘などに含まれた。武田氏の時代に荒川水系に上条堰(かみじょうせぎ)が設けられた。また、南部の平地は釜無川の氾濫原であったが、16世紀半ばに武田信玄によって釜無川左岸に堤防(信玄堤)が築かれ、江戸時代にも新田開発が進んだ。江戸時代はおおむね幕府領であったが、18世紀半ばに一橋領が設定されると、一時期北西部の甲州道中沿い宇津谷(うつのや)に陣屋が置かれた。甲州道中は釜無川の東岸を通り、竜地宿(りゅうちしゅく)は武田氏時代から商業・軍事の中心であった。荒川扇状地は穀倉地帯、釜無川に沿う竜王で栽培されたタバコは名品として知られた。

 産業は農業中心で、赤坂トマトやブドウ、ウメ、モモ、カキなどの果実、釜無川氾濫原ではサトイモ(やはたいも)が栽培される。西部の台地にはサントリー登美の丘ワイナリーがあり、ブドウ栽培から醸造までの作業が行われている。ソフトウエア関連企業でつくる竜王赤坂ソフトパークのほか工場も進出しているが、甲府市と東を接する立地条件から甲府郊外として商業地化し、甲府のベットタウンとなった地域もある。荒川上流の御嶽昇仙峡(みたけしょうせんきょう)は花崗岩が川の侵食を受けて形成されたもので、秩父多摩甲斐国立公園に属し、国の特別名勝に指定されている。面積71.95平方キロメートル、人口7万5313(2020)。

[編集部]


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