画仙(箋)紙(読み)がせんし

改訂新版 世界大百科事典 「画仙(箋)紙」の意味・わかりやすい解説

画仙(箋)紙 (がせんし)

中国の書道用紙を日本で模倣して,製紙したもの。本来,江戸時代に中国から輸入された紙(唐紙と総称した)の中に,画牋紙(雅仙紙・画箋紙など)の名の紙があった。これは中国の有名な紙で書画に用いる宣紙にちなむ名といわれる。宣紙は唐代の初めからすかれ,青檀(せいたん)を原料とした。なお,対照的な紙として竹材を原料とした毛辺紙がある。これは画仙紙に比べにじみが少なく,紙肌が滑らかで,細字用に用いられる。江戸時代に文人の間に,中国の書道用紙を好む趣味が広がったので,そのころから日本でも中国の書道用紙を再現する試みは行われたが,大きく発展することなしに終わっていた。1948年ころ,中国からの輸入が途絶した状態のもとで,山梨県南巨摩郡身延町の旧中富町西島で一瀬憲が,書家の竹田悦堂とともに中国紙を研究したのが機縁となって,甲州画仙紙が始められ,次いで昭和30年代の初めに因州画仙紙(鳥取市の旧佐治村と旧青谷町)が起こり,次いで書道半紙(改良半紙)の愛媛県四国中央市の旧川之江市などと,日本に急速に中国風の書道用紙の生産が発展した。甲州画仙紙,川之江の書道半紙はミツマタ古紙を多く使い,因州画仙紙は数多くの種類の木材パルプと地元で草と呼ぶ稲わらや麦わらを混ぜるのを特色としている。かつて,これら主要産地三椏みつまた)紙をすいていた。その他,高知,愛媛,島根福井,埼玉,石川,京都,福岡などに画仙紙をすく人が散在している。中国から輸入されるものを本画仙と呼び,日本ですかれるものを和画仙ともいっている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の画仙(箋)紙の言及

【唐紙】より

… 中世には唐紙を〈からかみ〉とよぶほかに,〈とうし〉ともよぶようになった。この場合は,中国で竹を原料としてすいた画仙紙用の毛辺紙を指すものと思われる。〈とうし〉を日本ですく試みは,江戸時代以後行われてきたがあまり盛んにならなかった。…

※「画仙(箋)紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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