異常気象に苦しむオーストラリア(読み)いじょうきしょうにくるしむおーすとらりあ

知恵蔵 の解説

異常気象に苦しむオーストラリア

オーストラリアはここ数年、異常気象による天候被害を受けている。南東部は記録的な干ばつに見舞われ、同国の主要産業の1つである農業が深刻な打撃を受けた。その影響は世界の穀物市場相場にまで及んだ。例えば小麦の場合、長く続く大規模な干ばつによって2年連続で不作となり、市場価格が急上昇した。その結果、飼料として小麦を消費する酪農家家畜を手放さざるを得なくなるケースが増え、肉牛飼育頭数の減少によって、日本向けの牛肉価格の高騰が懸念されている。また日本にも愛飲家の多いオーストラリア産ワインも、干ばつによってワイン用ブドウの収穫が大幅に減少し、2008年の生産量が例年の半分以下になる恐れが出ている。こうした事態に対して、政府は干ばつ被害を受けた農家への緊急援助を実施した。また内陸部の水資源確保のために今後10年間に約100億豪ドルを投じることを決定し、さらに各州が保有する水資源管理権限を中央の連邦政府に移管するとしている。一方で、西部の各地ではサイクロンが上陸し、大雨による洪水被害が出ており、こちらも国内経済への影響が心配される。

(竹田いさみ 獨協大学教授 / 永野隆行 獨協大学准教授 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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