異常震域(読み)いじょうしんいき

精選版 日本国語大辞典 「異常震域」の意味・読み・例文・類語

いじょう‐しんいき イジャウシンヰキ【異常震域】

〘名〙 地震のとき、震央から遠く離れているのに、周囲とくらべ異常に大きい震度を示す地域深発地震のとき現われやすく、地域的にも常習地帯がある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「異常震域」の意味・読み・例文・類語

いじょう‐しんいき〔イジヤウシンヰキ〕【異常震域】

地震の震度分布で、震央から遠く離れているのに、広い範囲にわたって震度が異常に高い地域。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「異常震域」の意味・わかりやすい解説

異常震域 (いじょうしんいき)

ふつうの浅発地震では,地震動は震央の付近でもっとも強く,震央から離れるにつれて弱くなり,遠い地点では人体に感じられない。ところが深発地震では,震央の付近では無感であるのに,数百kmも離れた地域で感じられ,震度3~4に達することもある。このように地震動が異常に強く感じられる地域を異常震域という。たとえば,岐阜県下に深発地震が起こると,富山,岐阜,愛知県以西では無感であるが,東京,宇都宮水戸福島,仙台などでは人体感覚があり,時には八戸釧路などでも感じられる。このように関東・東北北海道地方の太平洋側が異常震域になるのは,日本海やロシア沿海州あるいは東海道南方沖などに起こる深発地震の際も同様である。九州や南西諸島方面の深発地震では,九州・四国の太平洋側が異常震域になる。深発地震に際して島弧の海溝側に異常震域が現れることは,ニュージーランドなどでも認められている。

 異常震域の原因はプレートテクトニクスによって説明される。島弧地域では,大洋プレートが海溝付近から上部マントル中に斜めに潜り込んでいる。深発地震の地震波は,地震波の吸収の少ない大洋プレートの中を伝わって,島弧の海溝側の地域に到達する。一方,島弧の大陸側の地域には,吸収の大きい上部マントルを通過した地震波が到達する。潜り込んだ大洋プレートとその周辺の上部マントルの地震波の吸収の差が異常震域を生じさせる主因である。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「異常震域」の意味・わかりやすい解説

異常震域
いじょうしんいき

地震動は一般に震央に近いほど強い。しかし震央から比較的遠いにもかかわらず広い範囲で異常に大きな震度が観測されることがある。この地域を異常震域という。異常震域をおこす地震は深い震源をもつ地震に多く、北海道、東北、関東地方の太平洋岸の地域は異常震域になりやすい。減衰の少ない物質が震源付近に存在し、ある特定の方向へ広がっているとすると、その方向へ放射された波は減衰されないで遠くまで伝わり、震央付近であるにもかかわらず減衰の大きい物質内を通った波より強い振動を引き起こす。これが異常震域をつくりだす原因であると考えられている。この減衰の少ない物質は日本海溝付近で日本列島の下に沈み込んでいる厚さ100キロメートル程度の太平洋プレートであるといわれている。

[山下輝夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「異常震域」の意味・わかりやすい解説

異常震域
いじょうしんいき

通常の地震の震度分布とは異なり,震源の真上(震央)の震度は小さいが,遠く離れた場所で大きなゆれが観測される現象,またはその地域。硬い海洋プレート地震波をあまり減衰させずに伝える性質をもつために起こる。ウラジオストクなどのプレート沈み込み帯の海洋プレート内部で深発地震が発生したとき,位置的に震源に近い日本の日本海側よりも,離れている東日本太平洋側のほうが震度が大きいのはこの理由による。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

知恵蔵mini 「異常震域」の解説

異常震域

地震の震度分布において、震央(震源の真上)から遠く離れているのに強い揺れが伝わる現象、またはその地域。通常、地震の揺れは震央付近で最も強く、離れるにつれて弱くなる。しかし、震源が深い場合は震央付近に至るまでに揺れが弱まり、地震波が伝わりやすい硬い海洋プレートに近い地域では揺れが強まることから、こうした現象が起こりやすいとされる。日本では北海道、東北地方、関東地方の太平洋岸側などで度々観測されている。

(2019-7-30)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

知恵蔵 「異常震域」の解説

異常震域

震央付近では感じられない深発地震が、震央から数百kmも離れた海溝側の地帯で震度3〜4と、強く感じられることがある。この種の地帯が異常震域。これは、沈み込んだプレートの内部で地震波の吸収が少なく、地震波がその中をあまり減衰せず遠方まで伝わるため。

(阿部勝征 東京大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

百科事典マイペディア 「異常震域」の意味・わかりやすい解説

異常震域【いじょうしんいき】

震源の位置が変わっても,いつもよく地震を感じる地域。ここはまわりより揺れやすく,震央から遠いのに震度はかえって大きくなる。日本で起こる地震では,関東地方の北東部,東北地方の東半部,北海道の南東部など。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android