異相(読み)イソウ

デジタル大辞泉 「異相」の意味・読み・例文・類語

い‐そう〔‐サウ〕【異相】

普通の人とは異なった人相または姿。
「この小倅こせがれは―をしている」〈芥川・金将軍〉
仏語四相の一。変化していくもの。
能で、基本的な風体をはずれた芸風異風
「あらゆる物真似、―の風をのみ習へば」〈至花道

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「異相」の意味・読み・例文・類語

い‐そう ‥サウ【異相】

〘名〙 (形動)
① 普通とは様子、姿、人相などが異なっていること。また、そのさま。すぐれてよい場合にも悪い場合にもいう。
(イ) 人、動物の場合。
※聖徳太子伝暦(917頃か)上「太子聞日羅有異相
※天草本伊曾保(1593)烏と鳩の事「カラスモ マタ ソノ イロ スガタノ ysǒnauo(イサウナヲ) ミテ」 〔浄土論‐下〕
(ロ) 物事の場合。
※中華若木詩抄(1520頃)上「此詩は、常の格でないぞ。異相な詩と云こと也」
② 能で、本道にはずれたやり方。普通とは違ったやり方。異風。非風。
※至花道(1420)二曲三体の事「あらゆる物まね、異相(イサウ)の風をのみ習へば」
③ 仏語。
(イ) 性質、すがたを異にすること。⇔一相一理
法華義疏(7C前)一「然理則今昔雖異、只是一理、更無異相」 〔維摩経‐下〕
(ロ) 万物を三世にわたって生滅変化させるものを生、往、異、滅と分けた、その一つ。異。現在の位で変異させるものをいう。
(ハ) 華厳宗で説く六相円融の教義に見える六相(総相・別相同相・成相・壊相・異相)の一つ。存在するものはすべて六相をそなえると説き、同相と対応する。例えば総相を家全体とすれば、別相はそれを構成する部分、同相は柱など同じ性質のものをいうのに対して、異相は縦の柱に対する横の梁(はり)の如く、異なっていることをいう。
※華厳法界義鏡(1295)下「多義各異、名為異相。如施非戒忍非進等異故」
物理学で、位相の異なる状態

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