(読み)け

精選版 日本国語大辞典 「異」の意味・読み・例文・類語

け【異】

〘形動〙
① 普通、一般とは違っているさま。他のものとは異なっているさま。
書紀(720)推古三年四月(岩崎本訓)「其の烟気(けぶり)、遠く薫(かを)る。則ち異(ケ)なりとして献る」
万葉(8C後)一〇・二一六六「妹が手を取石(とろし)の池の波の間ゆ鳥が音(ね)(けに)鳴く秋過ぎぬらし」
② ある基準となるものと比べて、程度がはなはだしいさま。きわだっているさま。多く、連用形「けに」の形で、特に、一段と、とりわけなどの意で用いられる。
※万葉(8C後)二〇・四三〇七「秋と言へば心そ痛きうたて家爾(ケニ)花になそへて見まく欲(ほ)りかも」
曾丹集(11C初か)「おきて見んと思ひしほどに枯れにけり露よりけなる朝顔の花」
③ 能力、心ばえ、様子などが特にすぐれているさま。すばらしいさま。
源氏(1001‐14頃)葵「行ひなれたる法師よりは、けなり」
※夜の寝覚(1045‐68頃)四「御かたちのいみじうにほひやかに、うつくしげなるさまは、からなでしこの咲ける盛りを見んよりもけなるに」
④ (「けな」の形で用いることが多い) けなげであること。殊勝であるさま。→けな人けな者
浄瑠璃甲賀三郎(1714頃)四「ヲヲおとなしやけな子やな」
⑤ (「けなひと」「けなもの」の形で用い) 温和であるさま。また、柔弱であるさま。→けな人けな者
一風変わっておもしろいさま。おつなさま。
※浄瑠璃・男作五雁金(1742)新町捕物「ちっくりけな事云出しおった」

い【異】

〘名〙 (形動)
① 他と違っていること。また、そのさま。→異(い)を立てる異(い)を唱える
正法眼蔵(1231‐53)古鏡明鏡の明と古鏡の古と、同なりとやせん、異なりとやせん」
※妙一本仮名書き法華経(鎌倉中)四「国土、およひ弟子、正法と像法と、ことことくひとしくして、異(イ)あることなけむ」
② 普通、一般とは違っていること。変であること。不思議であること。また、そのさま。
※三教指帰(797)上「斲蠅飛鳶之妙。凌匠輸而翔異」
仏語異相のこと。四相の一つ。ものを変化させ、衰えさせるもの。
徒然草(1331頃)一五五「生・住・異・滅の移りかはる実の大事は」 〔倶舎論‐五〕

こと‐な・る【異】

〘自ラ五(四)〙 (形容動詞の「ことなり(異)」を動詞に転用したもの) 同じでない。違っている。また、特別である。
文明開化(1873‐74)〈加藤祐一〉初「人に異(コト)なった事さへすれば、なんでもかでも文明開化にしてしまふが」

い‐な【異】

連体〙 (形容動詞「異なり」の連体形「異なる」の変化したもの) ふつうでは考えられない。風変わりな。変な。妙な。
※玉塵抄(1563)五「これやうな異な人や鳥やけだもの魚などのことを」

こと‐・なり【異】

〘形動〙 ⇒こと(異)(一)

け‐に【異】

〘形動〙 ⇒け(異)①②

け‐・なり【異】

〘形動〙 ⇒け(異)

け‐な【異】

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「異」の意味・読み・例文・類語

い【異】

[名・形動]
他と違っていること。また、他と異なった意見。「を唱える」
普通とは違っていること。不思議なこと。また、そのさま。「なことを言う」「縁はなもの」
[類語]不思議異常異様奇異奇妙みょう面妖めんよう不可解不審不自然奇怪奇態風変わり特異異状異例非常別条変ちくりん変てこ変てこりんけったいおかしい妙ちきりんおかしな奇天烈きてれつ珍奇新奇珍妙奇抜奇警奇想天外突飛ファンシー突拍子もない言語道断無茶めちゃむちゃくちゃめちゃくちゃめちゃめちゃ滅法法外無理乱暴無体理不尽非理不当不条理不合理非合理狂的

い【異】[漢字項目]

[音](呉)(漢) [訓]こと
学習漢字]6年
他と違っている。別の。ことなる。「異国異種異状異常異色異性異存異同異動異例異論・異民族/差異小異・相異・変異
正式・正統でない。「異学異教異端
普通でない。あやしい。あやしむ。「異形いぎょう異様怪異奇異驚異妖異霊異
変わった出来事。「災異天変地異
[名のり]より

こと【異】

[名]
別のもの。他のもの。
「下の十巻を、明日にならば、―をぞ見給ひ合はするとて」〈二三
名詞の上に付いて複合語を作り、別の、他の、などの意を表す。「どころ(異所)」「ひと(異人)」
[形動ナリ]
それぞれ別々なさま。まちまちなさま。→異なる
「もろこしとこの国とは、こと―なるものなれど」〈土佐
普通と違っているさま。格別なさま。→こと
「この皇子みこ生まれ給ひて後は、いと心―に思ほしおきてたれば」〈・桐壺〉

け【異】

[形動ナリ]
普通と違っているさま。異常なさま。
衣手ころもで葦毛あしげの馬のいなく声心あれかも常ゆ―に鳴く」〈・三三二八〉
まさっているさま。格別であるさま。→
「十月ばかりの紅葉、四方よもの山辺よりも―にいみじくおもしろく」〈更級

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android