畳紙(読み)タトウガミ

デジタル大辞泉 「畳紙」の意味・読み・例文・類語

たとう‐がみ〔たたう‐〕【畳紙/×帖紙】

《「たたみがみ」の音変化》
折り畳んで懐中に入れ、鼻紙詩歌詠草などに用いる紙。懐紙かいし。ふところがみ。
厚い和紙に渋または漆を塗って折り目をつけた紙。結髪着物を包むのに使用。

たとう〔たたう〕【畳紙】

たとうがみ」の略。

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精選版 日本国語大辞典 「畳紙」の意味・読み・例文・類語

たたみ‐がみ【畳紙】

〘名〙
篁物語(12C後か)「ものも食はで、はなかうじ・橘をなむねがひける〈略〉二三ばかりたたみかみに入れて取らす」
浮世草子新可笑記(1688)三「細工の畳紙(タタミカミ)など出しけるは侍のみだりがはしき仕業なり」

たとう たたう【畳紙】

〘名〙
① 「たとうがみ(畳紙)①」の略。
※俳諧・桃李(1780)桃李の巻「すみれ啄雀の親に物くれん〈几董〉 春なつかしく畳帋とり出で〈蕪村〉」
② 「たとうがみ(畳紙)②」の略。
※滑稽本・六阿彌陀詣(1811‐13)二「押入のたとうから、小ぎれを見つけてくすねかけ」

たたん‐がみ【畳紙】

〘名〙 (「たたみがみ(畳紙)」の変化した語) =たとうがみ(畳紙)
※後撰(951‐953頃)離別・一三一一・詞書「旅の調度など取らする物から、たたむかみに書きて」

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改訂新版 世界大百科事典 「畳紙」の意味・わかりやすい解説

畳紙 (たとうがみ)

〈たたみがみ〉の音便で,衣冠束帯のときに懐中する紙をいう。帖紙とも書く。《枕草子》に〈みちのくに紙の畳紙の細やかなるが〉とあり,最初はあまり厚くない檀紙(だんし)をたたんだものと想像される。のちには〈引きあわせ〉〈杉原〉など,主としてコウゾ系統の厚様(あつよう)が使われたが,ガンピ系統の〈鳥の子〉の例もないではない。武家では〈杉原〉を使うのが故実であるが,直垂(ひたたれ),狩衣(かりぎぬ),大紋などを着るときは必ず色目のあるものを用いたという。1枚ずつ横に二つ,縦に四つに折りたたんでかさねるのが定めで,不時の用のためふところに入れた。歌の詠草などに用いられる場合も多かったであろうが,涙をぬぐい,鼻をかむなど,いまのハンカチーフの用もはたした。鼻紙を目的とする場合には,〈杉原〉20枚を五つに折った。畳紙は各時代を通じて文芸にしばしば出てくる。厚紙に柿渋や漆をぬり,折り目をつけてたたむようにし,いまのハンドバッグと同じ用途のものも〈たとう〉というが,これは後世の転用である。また今日では,白地の和紙で,たたんだ和服を四方からおおい,こよりやひもで結んで収納する形式のものをも指す。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「畳紙」の意味・わかりやすい解説

畳紙
たとうがみ

折り畳んで懐中に入れ、歌などを書いたり、鼻紙に用いたりした紙。「たたんがみ」ともいい、平安から江戸時代までの文学作品にもきわめて多くの用例が出てくる。最初は教養のある者のたしなみとして、公家(くげ)社会では檀紙(だんし)(陸奥紙(みちのくがみ))などを愛用したが、武家社会になると杉原紙(すぎはらし)が好まれるなど、時代によって用いられる紙の種類や折り畳み方などに変化がみられる。『日葡(にっぽ)辞書』(1603)にも採録されている。また近代では櫛(くし)などを入れるための、漆(うるし)や渋(しぶ)などを塗った厚紙を折り畳んだものをよぶ場合もある。

[町田誠之]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「畳紙」の意味・わかりやすい解説

畳紙
たとうがみ

「帖紙」とも書き,また「たたみがみ」「たとう」ともいう。 (1) 懐紙 (かいし) のこと。中世以来,公家,武家らが束帯装束の際,懐中に入れておき,鼻紙として,あるいは書状として,または歌をしたためるなどあらゆる用途に使った。故実によれば,色,枚数,折り方などに決りがあった。 (2) 厚紙 (渋や漆を塗ったものもある) で,和服や結い髪の道具をしまうためのもの。

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世界大百科事典(旧版)内の畳紙の言及

【懐紙】より

…たたんで懐に入れる紙の意で,〈ふところがみ〉〈たとうがみ〉また畳紙(じようし),帖紙ともいう。即興の詩や歌,あるいは消息を書いたり,菓子などの包紙やぬぐい紙としても用いられた。…

【畳紙】より

…帖紙とも書く。《枕草子》に〈みちのくに紙の畳紙の細やかなるが〉とあり,最初はあまり厚くない檀紙(だんし)をたたんだものと想像される。のちには〈引きあわせ〉〈杉原〉など,主としてコウゾ系統の厚様(あつよう)が使われたが,ガンピ系統の〈鳥の子〉の例もないではない。…

※「畳紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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