発癌物質(読み)ハツガンブッシツ

デジタル大辞泉 「発癌物質」の意味・読み・例文・類語

はつがん‐ぶっしつ【発×癌物質】

を発生させる物質。動物実験で比較的短期に高率に発生させることのわかった化学物質ベンツピレンなどの芳香族炭化水素アゾ化合物クロム化合物など。発癌性物質癌原性物質

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精選版 日本国語大辞典 「発癌物質」の意味・読み・例文・類語

はつがん‐ぶっしつ【発癌物質】

〘名〙 実験動物に投与して比較的短期間に、高率に癌を発生させうる物質の総称。ベンゾピレンなどの多核芳香族炭化水素、アゾ化合物、芳香族アミン、その他多数の化学物質に発癌性があることが知られている。造癌物質。〔癌(1955)〕

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百科事典マイペディア 「発癌物質」の意味・わかりやすい解説

発癌物質【はつがんぶっしつ】

癌原物質とも。癌を誘発する化学物質の総称。発癌物質は自然界にも存在する。たとえばアフラトキシンに代表されるカビ毒,二級アミンと亜硝酸の食べ合せで胃の中に生じるニトロソアミンなどである。さらに,化学合成によってつくられた物質の中にも,発癌性をもつものがある。IARC(国際がん研究機関)では,発癌性の疑いのある物質の動物実験より,明らかに発癌性をもつものをグループ1として50種,疑いのあるものをグループ2として約200種をあげている。そのうちの大部分は職業上,あるいは医薬品として接する物質である。最も発癌性が強いものはアフラトキシンとされる。
→関連項目癌抑制遺伝子産業公害シックハウス症候群受動喫煙腫瘍人工癌タール癌ディーゼル排出ガス公害分煙抑煙タバコ

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改訂新版 世界大百科事典 「発癌物質」の意味・わかりやすい解説

発癌物質 (はつがんぶっしつ)

癌原物質と同義語。発癌物質という言葉はかなり広く用いられているが,癌原物質という言葉のほうがよい。吉田富三は随想集《生命と言》の中で次のように論じている。〈ある物質または微生物病気原因となるときに“病原性”があるとはいうが,発病性があるとはいわない。病原性と“発病”とは違う。病原性のある物が体内に入っても,発病しないことがあって,そういう事実こそが,研究には大切なのである。同じ意味合いで,ある物質をもって直ちに発癌物質とよぶのは,表現として,用意が足りないと思うのである〉。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「発癌物質」の意味・わかりやすい解説

発癌物質
はつがんぶっしつ
carcinogen

癌の原因となる物質の総称。石炭タール中にある多環性炭化水素やアゾ化合物など。前者によって生じた癌はタール癌と呼ばれ,タール中に含まれる1,2-ベンズアントラセンなどの作用に起因する。後者にはp-ジメチルアミノアゾベンゼン (通常バター黄,DABなどと呼ばれる) などがある。シロネズミなどの皮膚に連続的に塗布するか,少量を連続的に経口投与または皮下注射することによって,皮膚癌を起させたり,肝臓癌をつくったりすることができる。女性ホルモンは乳癌に関係あるとされ,コレステロールなどからも発癌物質が人工的につくられている。発癌物質が含まれる物質を取扱う職業に従事する人には,いわゆる職業癌を起す場合がある。

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世界大百科事典(旧版)内の発癌物質の言及

【食品】より

…このほか,PCBやフタル酸エステル,放射性物質による汚染も問題となった。公害公害病(3)癌原性物質(発癌物質) 食品に含まれる発癌物質には,食品そのものに含まれる場合,調理の過程で発生する場合,食品添加物そのものがもつ場合など,いくつかの系統がある。 食品そのものに含まれる例には次のようなものがある。…

※「発癌物質」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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