白子(読み)しろこ(英語表記)albino

翻訳|albino

精選版 日本国語大辞典 「白子」の意味・読み・例文・類語

しろ‐こ【白子】

[1] 〘名〙
① 人間や動物で、先天的にメラニン色素が欠乏していて、皮膚・頭髪などが白色であるもの。また、その病気。アルビノ。しらこ。しらっこ。
※病草紙(平安末‐鎌倉初)「しろこといふものあり。をさなくよりかみもまゆも皆白く、めにくろまなこもなし」
② 白魚(しらうお)、また、氷魚(ひうお)
※随筆・梅の塵(1844)「氷魚とは麺条魚(めんじゃうぎょ)と云て、即ち白魚の事なり。又白子(シロコ)とも云」
③ 草木に生じる油虫で、からだに白い綿状のものをつけた虫。〔随筆・嬉遊笑覧(1830)〕
[2]
[一] 三重県鈴鹿市の地名。伊勢街道の旧宿場町。古くから小紋などの伊勢型紙白子型紙)の産地。白子山観音寺の境内にある不断桜は名木として名高い。
[二] 静岡県藤枝市にあった地名。東海道五十三次藤枝宿中の町名。

しらっ‐こ【白子】

〘名〙 (「しらこ(白子)」の変化した語)
① =しろこ(白子)(一)①
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉四「そのくせていしゅのつらア白(シラ)ッ子が白酒に酔たやうで」
② しろうと。堅気(かたぎ)の人。しらこ。
歌舞伎与話情浮名横櫛(切られ与三)(1853)四幕「しらっこの町家の住居、何もお前方につけ込まれて、無心を言はれる覚えはござんせぬわいなア」
③ 潔白なこと。
※歌舞伎・杜若艷色紫(1815)序幕「サア、白(シラ)っ子なら見せろ、見せろ」

しら‐こ【白子】

〘名〙
① 雄の魚の腹中にある乳白状の精液のかたまり。食用となる。
※志都の岩屋講本(1811)下「女魚が玉子を藻草へ生み付けると直に男魚が、それを尾を弾きながら。しらこと云って精気を泄し挂る」
② =しろこ(白子)(一)①

しら‐す【白子】

〘名〙
カタクチイワシマイワシイカナゴ(まれにアユ)などの稚魚の総称。無色透明であるが、ゆでると白っぽくなる。「しらすぼし」などにする。《季・春》 〔延宝八年合類節用集(1680)〕

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デジタル大辞泉 「白子」の意味・読み・例文・類語

しら‐す【白子】

カタクチイワシマイワシイカナゴウナギアユなどの稚魚。体は透明。
白子干し」の略。

しら‐こ【白子】

雄の魚の腹にある乳白色をした精巣タラアンコウなどのものは食用にする。
先天的にメラニン色素が欠乏していて、皮膚・粘膜・頭髪などが白色である個体。アルビノ。しろこ。

しろ‐こ【白子】

しらこ2」に同じ。

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改訂新版 世界大百科事典 「白子」の意味・わかりやすい解説

白子 (しろこ)
albino

〈しらこ〉とも読み,アルビノともいう。先天的に皮膚,毛髪,目などのメラニン色素を欠いた動物個体をいう。メラニンがないため,目は血液が透けて赤く見える。体が白くとも目の色が赤くないものは完全な白子とはいえない。多くは遺伝的原因によるもので,メラニン生合成の阻害,とくにチロシンからの合成に関与するチロシナーゼの遺伝的欠損または活性阻害の存在が認められる。このような現象albinismは白化現象,白化症(医学では白皮症)などとも呼ばれ,多くの動物種でみられる。シマヘビの白化型である〈シロヘビ〉をはじめ,野生動物の白子は古くから知られ,しばしば信仰の対象とされてきた。しかし一般に野生状態では洞窟のような特殊な環境に住む動物を除けば,繁殖能力に乏しい。実験動物ではマウス,ラットカイウサギなどの白子がよく知られているが,これらは人間が白化型を選別して作りだした品種である。なお植物についても葉緑素を欠いて白くみえるものを白化chlorosisと呼ぶことがある。
執筆者:

先天的に皮膚のメラニン色素が欠損している病気で,全身性のものと限局性のものとがある。全身性の場合には,全身の皮膚は白色ないし淡いピンクを呈し,毛髪は銀色あるいは淡褐色で,目の虹彩や脈絡膜もメラニン色素を欠き,瞳孔は淡紅色で羞明(しゆうめい)(まぶしがること)がある。皮膚は日光光線に過敏で,日焼けを起こしやすく,毛髪,歯の発育障害,眼振,斜視,難聴,精神遅滞などを伴うこともある。頻度は民族により異なるが,日本人では約2万人に1人で,常染色体性劣性の遺伝病であり,両親が血族結婚である場合が多い。メラニン色素をつくる色素細胞は存在するが,色素は形成されない。限局性のものは常染色体性優性の遺伝病で,前額,生えぎわの白斑が多い。白斑と褐色斑を同時に伴うまだら症もある。治療は,強い日光をさけるようにし,またオキソラレンにより紫外線耐性を増すようにする。
執筆者:

白子 (しろこ)

伊勢国(三重県)奄芸(あむき)/(あんげ)郡の港町。1107年(嘉承2)12月の摂関家政所下文に〈白子浜〉の名が見える。平安時代には古市ともいわれ,伊勢平氏の水軍〈白児(しろこ)党〉発祥の地とされる。1582年(天正10)本能寺の変の直後,徳川家康が伊賀越の難をのがれて,ここから三河(愛知県)に脱出した地点である。近世は参宮街道の宿場町,港町として繁栄した。江戸時代には紀州領として,江戸向けの貢租米ことに伊勢木綿,神戸(かんべ)木綿などの輸送港として名高く,江戸大伝馬町組,江戸白子組の木綿問屋に属する積問屋,廻船問屋があり,木綿輸送の基地であった。伊勢木綿のほか知多木綿は尾張沿岸の港からこの白子へ送られ,白子問屋の廻船に積み替えられて江戸へ送られた。木綿の積み降ろし高は,幕末50万反,金額にして5万両から7万両に及んだ。江戸からの帰り荷には上総の干鰯(ほしか)が運ばれ,近郷から遠く近江・大和へ運ばれた。紀州藩の保護を受けた染物の白子型紙(伊勢型紙)の産地としても知られた。明治以後,港の繁栄は四日市に奪われ衰微した。1942年鈴鹿市に合併した。
執筆者:

白子 (しらす)

カタクチイワシ,マイワシ,ウルメイワシ,イカナゴその他多くの種類の稚魚で,体が無色透明なものの総称。それらをそのまま,あるいは塩水で煮て干したものを白子干しという。《料理網目調味抄》(1730)に〈ちりめん〉,《新撰献立部類集》(1776)に〈縮緬(ちりめん)ざこ〉と見えるのがそれで,関西では現在も〈ちりめんじゃこ〉などと呼ぶ。おろしあえ,酢の物などにするほか,サンショウの実とつくだ煮ふうに煮込むのもよい。カタクチイワシのしらすを薄く紙状にすいて干し上げたものが〈たたみいわし〉で,火であぶって酒のさかななどにする。
執筆者:

白子[町] (しらこ)

千葉県中部,長生郡の町。人口1万2151(2010)。九十九里浜の南部に位置する。集落は砂丘上に海岸から内陸に向かって納屋集落,本村,新田集落と列状に並び,これらの間の低地は水田になる。かつては地引網によるイワシ漁の中心地だったが,沿岸漁業衰退後は農業が産業の中心となった。米作のほか,野菜の露地栽培,ハウス栽培が行われる。天然ガスが採取され,町営ガス事業が行われている。ヨードを原料にした化学工場も立地する。海岸は夏季には海水浴場としてにぎわう。
執筆者:

白子 (しらこ)

魚類の精巣の通称で,卵巣を真子(まこ)というのに対する語。一般に味のよいものではなく,多くは肥料にされる。食用にするのはタラ,フグ,アンコウなどの成熟した白子で,なべ物,汁の実,煮つけなどにする。ただし,一部のフグでは有毒である。白くてやわらかく,熱してもかたくならない。しゅんは冬季である。タラの白子は菊子(きくこ)ともいう。古くは雲腸(くもわた),菊腸(きくわた)などと呼ばれて賞味された。白子のタンパク質は必須アミノ酸,ことにアルギニン,ヒスチジンを多く含んでいる。
執筆者:

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「白子」の意味・わかりやすい解説

白子
しろこ

三重県北部,鈴鹿市の中心市街地の1つ。旧町名。伊勢湾にのぞみ,参宮街道に沿う。堀切川河口に小港があり,産品を江戸へ積出し,またここから奈良,京都への陸路が通じた。 1937年以降鈴鹿海軍航空隊その他軍施設がふえ,白子港も改修された。現在は漁港で,カタクチイワシ,イカナゴなどを水揚げ,煮干に加工。伝統の伊勢型紙を特産し,また奈良に次ぐ墨の産地。ロシアに漂流した大黒屋光太夫の出港地としても知られる。海岸は伊勢の海県立自然公園に属する鼓ヶ浦海岸。

白子
しらす

ニシン科,ウナギ科,イカナゴ科など透明で細長い仔稚魚をさす。

白子
しらこ

アルビノ」のページをご覧ください。

白子
しろこ

アルビノ」のページをご覧ください。

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日本の企業がわかる事典2014-2015 「白子」の解説

白子

正式社名「株式会社白子」。通称「白子のり」。英文社名「SHIRAKO CO., LTD.」。食料品製造業。明治2年(1869)創業。昭和14年(1939)「合資会社白子清次郎商店」設立。同18年(1943)株式会社化。同40年(1965)現在の社名に変更。本社は東京都江戸川区中葛西。海苔加工品メーカー。業界最大手。お茶漬け・ふりかけ・スープ・レトルト食品なども製造。主な取引先は全国の百貨店・食品商社。

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百科事典マイペディア 「白子」の意味・わかりやすい解説

白子【しろこ】

三重県鈴鹿市南部の一地区。延暦年間に始まったといわれる染色用,型染用の型紙(伊勢型紙)の製造が盛んで,全国市場を独占する。伊勢湾に臨む漁港でもあり,近世米積出港としても栄えた。

白子【しらす】

カタクチイワシ,マイワシ,ウルメイワシ,イカナゴ,アユ,エソ,シラウオなどのほとんど無色透明な稚魚の総称。沿岸の表層近くを目の細かい網でひいてとる。生食もするが,ゆでて干した白子干し(ちりめんじゃこ)としても賞味される。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「白子」の解説

白子 (シラス)

動物。イワシ類,アユ,ウナギ,アナゴ等の仔魚名

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世界大百科事典(旧版)内の白子の言及

【イワシ(鰯∥鰮)】より

…現在,加工品としては,マイワシとウルメイワシが目刺し,丸干し,みりん干しなどの干物やオイルサーディンの缶詰にされる。〈ひしこ〉とか〈しこいわし〉とも呼ばれるカタクチイワシはごまめや煮干しのほか,稚魚は白子(しらす)干しやたたみイワシにされる。また,大羽イワシは秋田名物しょっつるの原料ともされる。…

【カタクチイワシ(片口鰮∥片口鰯)】より

…ニシン目カタクチイワシ科の海産魚(イラスト)。上あごだけしかないように見えることからこの名がある。セグロイワシの別名のように,背が青黒く,腹部は銀白色である。体はやや円筒状で,上あごは眼の後方にまで開く。近年の飼育技術の進歩につれて,各地の水族館でも展示が行われ,キラキラとうろこを輝かせ,群れをなして身を翻す光景を見ることも可能になった。海の牧草の名で呼ばれるように一生を通して多くの魚の餌となり,海の食物連鎖の中で重要な位置を占めている。…

【鈴鹿[市]】より

…三重県中北部の市。1942年河芸(かわげ)郡の神戸(かんべ),白子(しろこ)の2町と7ヵ村,鈴鹿郡の5ヵ村が合体して市制。人口17万9800(1995)。…

※「白子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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