白板症(読み)はくばんしょう(英語表記)Leukoplakia

六訂版 家庭医学大全科 「白板症」の解説

白板症
はくばんしょう
Leukoplakia
(口・あごの病気)

どんな病気か

 世界保健機関(WHO)によれば「ほかのいかなる疾患とも見なされない白色が優勢な口腔粘膜病変」とされています。男性は女性の2倍と多く、年齢では50~70代に多い病気です。部位では歯肉、舌、頬粘膜に多くみられます。

原因は何か

 原因としては、喫煙、過度なブラッシングによる擦過(さっか)刺激、合わなくなった不良補綴物(ほてつぶつ)充填(じゅうてんぶつ)う蝕(しょく)むし歯)などの長期刺激があげられますが、原因不明なものも少なくありません。

症状の現れ方

 粘膜の一部がさまざまな程度の白色になり(白斑型(はくはんがた))、表面は平滑なものや、しわ状のものもあります(図8)。白色の程度も高度になり、いぼ状に隆起してくるもの(疣型(いぼがた))もあります。また、隆起はしないで、赤い部分(紅斑(こうはん))が混在してくるもの(紅斑混在型(こうはんこんざいがた))もあります。

 白斑のみでは痛むことはありませんが、紅斑が混在するものでは痛みを伴うようになります。

 長期に経過すると、白板症からがんが発生することもあります。これまでの日本の報告では、長期経過で白板症の4~8%程度に悪性化がみられています。

検査と診断

 生検組織の一部を切除して行う組織学的検査)により正確な診断が可能です。生検により、初期のがんや、白板症に類似した扁平苔癬(へんぺいたいせん)乳頭腫(にゅうとうしゅ)などとの区別が可能です。また、白板症の悪性潜在能(がんになりやすいか)の診断もできます。

治療の方法

 病変を切除するのが最も確実な治療法です。しかし、広範囲の病変では切除すると機能障害が出ること、白板症は一生もっていてもがんにならなければ、治療の必要は必ずしもないこと、また、白板症からがんになっても経過観察を定期的に行えば、極めて早期に対処することも可能であることから、以上を総合して患者さんにすべての可能性を話し、そのうえで、生検や切除を決めます。

病気に気づいたらどうする

 口のなかに、白色あるいは白色と赤色の混在する病変を見つけたら、歯科医に相談しましょう。気づいて2週間くらいは経過をみてもよいですが、それ以上続いているようであれば、歯科医院あるいは病院口腔外科を受診するのがよいでしょう。必要に応じて適切な病院を紹介してくれます。

天笠 光雄


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

百科事典マイペディア 「白板症」の意味・わかりやすい解説

白板症【はくばんしょう】

粘膜に生ずる白色平滑の斑面で,周辺はやや発赤し境界明瞭。主として歯列に対応する口腔内粘膜,舌前半,唇(くちびる),その他外陰部,尿路などに起こる。時に癌(がん)化することがある。
→関連項目口腔癌前癌状態

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「白板症」の意味・わかりやすい解説

白板症
はくばんしょう
leukoplakia

白色角板症,ロイコプラキーともいう。皮膚粘膜移行部,粘膜に境界鮮明な白色角化性病変が生じる疾患。老人性角化腫あるいはボーエン病類似の組織学的変化があり,表皮内癌性病変とみなされている。口腔,口唇に最も多く,外陰部にも生じる。症候性,外傷性の良性のものもある。

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