百万町開墾計画(読み)ひゃくまんちょうかいこんけいかく

改訂新版 世界大百科事典 「百万町開墾計画」の意味・わかりやすい解説

百万町開墾計画 (ひゃくまんちょうかいこんけいかく)

722年(養老6)に出された良田百万町の開墾計画。国郡司が人夫(公民の成年男子)に食料を支給して10日を限度に徴発し,道具は官物を貸し出して開墾にあたらせることとした。国郡司が開墾を怠れば罷免し,恩赦にあっても許さないという厳しい態度でのぞんだ。また百姓が荒野閑地を開墾して雑穀を収穫すれば,その収量によって勲位を授けたり,賦役終身免除したりした。この法令が対象としたのが陸奥国だけか全国か,また開墾の対象が陸田(りくでん)だけか水田をも含むかについては,諸説が対立している。陸奥国の陸田開発とみる説は,同じ日に出された陸奥の鎮所への穀物運搬についての法令と関連させて,辺境における兵粮確保の政策の一環とみる。しかし,10世紀に政府に登録された総田数がほぼ90万町であったことを参照すると,良田が条里制地割を施す田をさすとすれば,ラウンド・ナンバーの目標額として,100万町はそれほど不自然な数字ではなく,あるいはこのころ全国的に行われていたと推定される大規模な条里制開発と関連していたのかもしれない。もしそうであれば,翌723年に出された三世一身法は,このような公功(公的に徴発された労働力)による開墾ではなく,百姓の私功(私的な労働力)による水田開発を対象としていたことになる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「百万町開墾計画」の意味・わかりやすい解説

百万町開墾計画
ひゃくまんちょうかいこんけいかく

722年(養老6)に長屋王(ながやおう)の政権もとで策定された国費による田地開墾計画。この計画が、全国を対象とするものか奥羽地方のみを対象とするものか、開墾すべき田地が稲作のための水田か雑穀栽培のための陸田か、その目的が耕地の増大にあるのか備荒策なのか、翌723年に発布された三世一身法(さんぜいいっしんのほう)と関係があるのかないのか、これらの点について古代史家の意見は分かれている。ただ全国的な水田開墾計画とみた場合、当時の既耕水田面積はほぼ百万町と推定されるから水田倍増計画ということになる。しかし水田開発には灌漑(かんがい)施設の建設という困難な事業を伴うことを考えると、実行不能のデスクプランということになる。その点、奥羽地方の軍事的必要から雑穀栽培のための陸田の開発計画つまり食糧増産計画とみるほうに分があるが、多くを状況証拠に頼らざるをえないうらみがある。

[虎尾俊哉]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

山川 日本史小辞典 改訂新版 「百万町開墾計画」の解説

百万町開墾計画
ひゃくまんちょうかいこんけいかく

722年(養老6)4月25日の太政官奏による,水旱異常に備えるための良田100万町の開墾計画。国郡司の監督のもとに,1人10日を限度として人夫を徴発し,用具は官物を貸与した。対象となる地域が全国なのか奥羽地方のみか,また地種に陸田(りくでん)が含まれるかなどについて定説はない。ただし地域については,その褒賞に勲位が含まれていることなどから奥羽地方とする説が有力。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android