百万遍念仏(読み)ひゃくまんべんねんぶつ

精選版 日本国語大辞典 「百万遍念仏」の意味・読み・例文・類語

ひゃくまんべん‐ねんぶつ【百万遍念仏】

〘名〙
彌陀名号を七日間ないし一〇日間に百万回唱えること。古く中国の僧道綽(どうしゃく)に始まると伝えられる。日本浄土宗では元弘元年(一三三一後醍醐天皇の勅により知恩寺八世善阿空円が行なったのが最初とされる。百万遍
台記‐康治三年(1144)三月一八日「百万遍念仏、今日酉刻終之」

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改訂新版 世界大百科事典 「百万遍念仏」の意味・わかりやすい解説

百万遍念仏 (ひゃくまんべんねんぶつ)

祈禱追善などのため,大型の数珠を多数のものが早繰(ざらざらぐり)して,同音に唱える念仏のこと。百万遍の念仏に用いる大念珠を百万遍数珠という。百万回の念仏を唱えることを本義とし,これに1人が7日または10日間に100万回念仏を唱えることと,10人またはそれ以上の者が同時に唱えた念仏の総計が100万回におよぶものと2種類がある。後者は100人の集団が念仏を100回唱えれば1万遍となり,同時に自他の唱える念仏の功徳が相互に隔通しあって,総計で100の3乗,つまり100万回の念仏を唱えたのと同じ功徳があるとする。100人は実数ではなく大集団をあらわす数である。鎌倉初期に百万遍念仏が行われたことは,滋賀県甲賀市の旧信楽(しがらき)町玉桂寺の阿弥陀仏像胎内文書で明らかであるが,後世のような大念珠が用いられていたかは不明である。浄土宗で攘災のためにこれを行った最初は知恩寺8世善阿空円と伝える。善阿は1331年(元弘1)後醍醐天皇の勅により7日間にわたって念仏百万遍を修したところ,疫病が終息したので,天皇から〈百万遍〉の寺号と弘法大師利剣の名号を賜ったという。百万遍念仏は〈過去追善,現在祈禱〉(《看聞御記》)に効験があるとされ,室町時代には村々でも盛んとなり,戦国時代には宮中の恒例行事となって,正月,5月,9月の16日に行われていた。今も寺院や村々で鎮魂,追善,農耕虫送り雨乞い),除災祈禱などの民俗念仏として伝承されている。
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世界大百科事典(旧版)内の百万遍念仏の言及

【四天王寺】より

…とくに西門は極楽の東門にあたるとされ,西門外念仏所は12世紀に入って念仏の中心となった。出雲聖人の主導した百万遍念仏は,貴賤をとわず,道俗男女が一定期間参詣して念仏し,鳥羽法皇や藤原忠実・頼長らも参加した。西門外の海は極楽への道として,夕日に浄土の想いをはせる日想観(につそうかん)を修し,入水往生を遂げる聖や尼が少なくなかった。…

※「百万遍念仏」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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