百家争鳴(読み)ひゃっかそうめい

精選版 日本国語大辞典 「百家争鳴」の意味・読み・例文・類語

ひゃっか‐そうめい ヒャクカサウメイ【百家争鳴】

〘名〙 多くの学者・文化人が、自説を自由に発表し論争すること。革命後の中国で、一九五六年、中国共産党に対する批判を広く党外に呼びかけ、のちの反右派闘争のきっかけとなった運動のスローガン
現代史課題(1956)〈亀井勝一郎〉革命の動きをめぐって「中国で『教条主義』と言ふとすぐ借用し、『百家争鳴』と言ふとそれを用ゐる」

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デジタル大辞泉 「百家争鳴」の意味・読み・例文・類語

ひゃっか‐そうめい〔ヒヤクカサウメイ〕【百家争鳴】

多くの知識人・文化人が、その思想学術上の意見を自由に発表し論争すること。中国共産党の文化政策スローガンの一。1956年「百花斉放」とともに提唱された。

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四字熟語を知る辞典 「百家争鳴」の解説

百家争鳴

多くの学者・文化人が、活発な議論を戦わせること。

[使用例] 中国で「教条主義」と言うとすぐ借用し、「百家争鳴」と言うとそれを用いる[亀井勝一郎*現代史の課題|1956]

[使用例] ところが一紙だけね、特集の囲みに組んでいた。ひと味ちがう内ゲバ、上部の両セクトは沈黙、百家争鳴の応援団。どのようにひと味ちがうか?[大江健三郎*ピンチランナー調書|1976]

[使用例] これだけいろんな「日本語」があり、それを対象にしてあまたの「日本語論」が百家争鳴、こんなにさかんになったのも、結局のところは「日本語」にかかわるさまざまな問題が安定していないからなのだろう[加藤秀俊*なんのための日本語|2004]

[解説] 古代中国の春秋戦国時代に、君主に対して政策を提案する論客たちが現れました。さまざまな学派の思想家をまとめて「しょひゃっ」と言います。
 それから二千年以上経った一九五六年のこと。成立後間もない中華人民共和国の国家主席・もうたくとうは、国家建設を進める中で、「ひゃっせいほう、百家争鳴」という政治標語を公表しました。
 「百花斉放」とは、多くの花が一斉に開くように芸術運動を活発にすること。そして、「百家争鳴」とは、いろいろな立場の学者が自由に議論することです。この「百家」は、まさしく諸子百家の「百家」と同じです。古代の論客たちのように、存分に議論しなさい、というわけです。
 この標語とは裏腹に、中国は間もなく反体制派の弾圧へと進んでいきます。
 今日、「百家争鳴」は、政治的な議論に限らず使われることばです。テーマは何であれ、侃侃かん諤諤がくがくの論戦が行われることを指します。諸子百家の頃から考えると、かなり意味が大衆化しました。

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改訂新版 世界大百科事典 「百家争鳴」の意味・わかりやすい解説

百家争鳴 (ひゃっかそうめい)
Bǎi jiā zhēng míng

解放後の中国で,知識人の文学,芸術,科学活動を含む学術・思想面における積極性を引き出すために,毛沢東が1956年5月の最高国務会議で提起した文化政策のスローガン。百家争鳴は,もともと古代の戦国時代,諸子百家による思想・学術活動の活況を表す言葉であった。たとえば,18世紀清代のすぐれた史学理論家として知られる章学誠は,〈諸子争鳴,みな先王の一端を得〉(《文史通義》)といい,清代の一大叢書《四庫全書》の目録解題である《四庫全書総目》は雑家類を評して〈衰周の季,百氏争鳴す。説を立て書を著し,おのおの流品をなす〉といって,戦国時代の思想・学術の活発さを表現している。こうして〈百家争鳴〉の語は,戦国の思想状況を現代に照応させるスローガンとしてよみがえり,毛沢東の提起をうけた中国共産党宣伝部長陸定一は,科学文化工作会議の講演で〈百花斉放・百家争鳴〉の具体的方針を提示した。百花斉放は主として文学・芸術面における多様な対象とその研究に関する方法論を開花させることをいった。

 このスローガンの背景となったのは,建国後の《紅楼夢研究》批判胡適思想批判胡風批判などの激しいブルジョア観念論批判によってもたらされた学術・思想界,文芸界の萎縮した状況を是正し,積極的な社会主義建設を遂行するためには知識人の結集を必要とするという党中央の意志があった。しかし予期に反した党に対する批判が激発した結果,1957年,反右派闘争が開始され,〈百家争鳴〉は鳴りやみ,〈百花斉放〉はしぼんでしまった。社会主義建設における党の指導性を否定する恐れを党中央がいだいたがためであった。いわゆる〈自由化〉とは性格を異にする文化政策であったのである。今日,〈百花斉放・百家争鳴〉は,〈双百〉と簡称されて,現代化政策の完遂をめざす現指導部により,国家建設の諸分野でさかんに提唱されている。
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とっさの日本語便利帳 「百家争鳴」の解説

百家争鳴

学術上の各派が自由に論争を展開すること。様々な花が一斉に咲き誇る「百花斉放」と併せて用いられる。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

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