日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
眠れる森の美女(ペローの童話)
ねむれるもりのびじょ
La belle au bois dormant
ペローの童話集『過ぎし昔の物語ならびに教訓』中の一編。悪い仙女の呪(のろ)いで百年の眠りについた姫が、王子の愛で呪いが解けて眠りから覚め、2人はめでたく結婚(前段)、しかし王子の母は実は食人鬼で、王子と姫との愛児オーロール(暁姫)、ジュール(日の子)を食べようとするが、結局、怪物は退治されて真の幸福が訪れる(後段)。王子や英雄の到来で眠っている姫が目を覚ますテーマは、ヨーロッパ古来の民間伝承に豊富にあり、洞窟(どうくつ)や城の中で長らく眠るという話も古代・中世の伝説に多い。また16世紀イタリアのコント作家バジーレの『ペンタメロン(五日物語)』中の『ソレとルナとタリア』も同一テーマを追っているが、タリア姫の双生児ソレ(日の子)、ルナ(月の子)は、母親の指をしゃぶって彼女を眠りから覚ます。さらに14世紀フランスの物語『ペルセフォレー』にも同じ話がみられる。グリムの『野ばら姫』も、ペローの話の前段とほとんど同じだが、後段の母后=食人鬼の話は削られ、これは別の話として残されている。
[榊原晃三]
『新倉朗子訳『完訳ペロー童話集』(岩波文庫)』