め‐くばせ【眴】
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浄瑠璃・
宇治の姫切(1658)初「二人の物みるよりも、すわやときっとめくばせし」
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今戸心中(1896)〈広津柳浪〉五「『もう此儘出掛けよう、夜が明けても困る』と、
西宮は小万に
(メクバ)せして」
[
語誌](1)
中古には目で合図することを「めをくはす」「めくはす」といった。「め」は「目」、「くはす」は「食はす」で、目を合わせる意を表わす。この「めをくはす」は
中世には用いられなくなり、「めくはす」「めくはせ」の形のみが残った。→
めくわせ。
(2)中古には「めくはせ」と
清音であったが、中世末には第二音節が
濁音化した「めぐはせ」も使われた。
近世には第三音節を濁音とする「めくばせ」が現われた。
(3)互いに目を交わすというところから「めくばせ」とほぼ
同意の「めまじ(
目交)」「めまぜ(目交)」も用いられていたが、現在では「めくばせ」が一般的である。
め‐くわせ ‥くはせ【眴】
〘名〙 (「めぐわせ」とも) まばたきして
意志を伝えること。目を動かして合図すること。めくばせ。めぐばえ。めぐわえ。めく
ばし。
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色葉字類抄(1177‐81)「眴 メクハス メクハセ」
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太平記(14C後)
一四「式部大夫義治は父の義助の勢の中へつと懸入り様に、
若党にきっと目くはせせられければ」
[語誌]→「めくばせ(眴)」の語誌
め‐くわ・す ‥くはす【眴】
〘自サ下二〙 まばたきして意志を伝える。目を動かして合図する。目くばせをする。めくばす。
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伊勢物語(10C前)一〇四「世をうみのあまとし人を見るからにめくはせよともたのまるる哉」
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読本・
春雨物語(1808)樊噲上「このあぶれ者等も、大蔵なるべしとて、目くはせたるを見て」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報