石摺(読み)いしずり

精選版 日本国語大辞典 「石摺」の意味・読み・例文・類語

いし‐ずり【石摺】

〘名〙
石碑などに刻まれた書画を、墨をつけて紙に写しとること。また、写しとったもの。地が黒く、書画の部分が白く出る。拓本(たくほん)打碑(だひ)乾打碑(かんだひ)
※拾遺古徳伝絵詞(1301)九「義之(ぎし)がいしずり一紙のおもてに十二行(かう)、〈八十余字〉これに一首のうたをあひそへり」
② 書画を板に刻み、墨をつけて地が黒く、書いた部分が白く出るように、紙に写しとること。また、写しとったもの。
※俳諧・桃青三百韻附両吟二百韻(1678)「そのさとへ石摺(いしズリ)の文かよひけり〈信章〉」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「石摺」の意味・わかりやすい解説

石摺
いしずり

染め上げた裂(きれ)を凹凸のある板の上へ水張りし、これに水を加えながら、固い物で表面を平らに摩擦すると、凸部が擦れ、染料がとれて裂地に濃淡ができる。これを利用して、下に木目のたった板や、簡単な文様を刻した物を置いて、これを生地の上へ移すことをいう。染料のかわりに顔料を引き染めしたものを用いればいっそう効果的である。明治から大正ころまで、木綿地にこの方法で木目形を摺ったものが、女性用の雨合羽に多く用いられた。布地を摩擦するのには、拍子木形の堅木を用いる。これを石摺というのは、できあがったものが、石や金属に刻された文字や模様などを紙に写す拓本(たくほん)(石刷り)と似ていることからいわれたことで、石を用いて擦るという意味ではない。凹凸のない平らな板の上に、皺(しぼ)のある縮(ちぢみ)や糸の太い紬(つむぎ)など、布面に凹凸のある裂地を張って石摺をすると、布面の凸部が擦れて、味のある風趣を生じる。これは通常の石摺と区別して、頭擦(あたまず)りと称する。

山辺知行

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「石摺」の意味・わかりやすい解説

石摺
いしずり

石碑の面や木,石に刻した文字の上に紙を当てて墨をつけ,刻まれた文字を写し取ったもの。いわゆる拓本摺 (→拓本 ) のこと。中国では古くから能書家の筆跡手本鑑賞のため,この方法で写し取ることが盛んであった。石摺を集めたものを法帖といい,五代の『昇元帖』,宋代の『淳化閣帖』などが早い作品として著名

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改訂新版 世界大百科事典 「石摺」の意味・わかりやすい解説

石摺 (いしずり)

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世界大百科事典(旧版)内の石摺の言及

【拓本】より

…搨本(とうほん)とも称し,日本では石摺(いしずり)ともいう。中国で石碑や銅器に刻された文字や図像を,特殊な方法で紙の上に直接写し出したもの,またその技法をもさす。…

※「石摺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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