石油樹脂(読み)せきゆじゅし(英語表記)petroleum resin

改訂新版 世界大百科事典 「石油樹脂」の意味・わかりやすい解説

石油樹脂 (せきゆじゅし)
petroleum resin

石油化学工業で行われるナフサ分解の副生油の一部(不飽和性の高いジエン類)を原料とし,重合反応を行わせて樹脂状とした製品をいう。おもな用途は,紙のサイズ剤(紙質を高める目的で用いられ,インキの浸透性,平滑性,強度,安定性などを改良する),塗料,ゴム添加剤などである。石油樹脂の性状は原料と製法により大きく異なり,それによって用途もいろいろである。主原料はナフサ分解の重質不飽和留分であるが,副原料としてスチレンマレイン酸などが用いられることもある。重合反応には硫酸塩化アルミニウムフッ化ホウ素などの酸性触媒が用いられ,触媒量,反応温度,反応時間などの条件によっても製品の品質が変化する。紙サイズ剤としては,天然産の松やに(ロジン)系のものに代わって需要が伸びた。タイル用(塩化ビニル樹脂,アスファルトタイルなどに併用),防水剤(布,紙,皮革,木材合板など)にも使われる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「石油樹脂」の意味・わかりやすい解説

石油樹脂
せきゆじゅし
petroleum resin

ナフサを熱分解してエチレンプロピレンブタジエンなどの有用な化合物を得ているが、それらを取り去った残りのC4~C5留分(主としてC5留分)あるいはC5~C9留分(主としてC9留分)を混合状態のまま重合して得られた樹脂をいう。原料のオレフィン留分の組成比率によって生成樹脂の性質が異なるが、分子量200~2000、軟化点5~160℃の透明な淡黄色ないし黄褐色松脂(まつやに)状樹脂である。酸・アルカリに安定でかつ耐水性も良好。いろいろな有機溶剤によく溶ける。安価なので印刷インキの肉づけ剤、ゴム配合剤、粘着テープ用粘着付与剤、ホットメル接着剤、紙サイズ剤、塗料、布やコンクリートの防水などに広く用いられている。

垣内 弘]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「石油樹脂」の意味・わかりやすい解説

石油樹脂
せきゆじゅし
petroleum resin

石油ナフサを熱分解して必要な留分を採取した残りの留分のうち,主としてC 5 およびC 9 留分から不飽和炭化水素を単離することなく,酸性触媒により固化したものを石油樹脂という。普通,分子量は 3000以下で,オリゴマーの範囲である。石油樹脂は単独で用いられることはなく,他の物質と混合して,接着剤,塗料,印刷インキ,ゴム添加剤などに利用されている。

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化学辞典 第2版 「石油樹脂」の解説

石油樹脂
セキユジュシ
petroleum resin

不飽和石油留分を重合して製造される合成樹脂ナフサ分解で副生する不飽和性の高い C5 留分などがおもな原料に用いられ,これをフリーデル-クラフツ触媒によって重合すると得られる.製紙用サイズ剤,塗料,ゴム添加剤などに用いられる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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