石清尾山古墳群(読み)いわせおやまこふんぐん

日本歴史地名大系 「石清尾山古墳群」の解説

石清尾山古墳群
いわせおやまこふんぐん

[現在地名]高松市峰山町など

石清尾山(二三二・六メートル)から紫雲しうん(二〇〇メートル)にかけて築造された前期から後期にかけての古墳群。国指定史跡。中心をなすものは摺鉢すりばち谷を取巻く周囲の尾根上に築造されている積石塚で、ねこ塚・かがみ塚が双方中円墳ひめ塚・石船いしふね塚・北大塚きたおおつか小塚こつか・九号墳・鶴尾神社つるおじんじや四号墳をはじめ、方墳や円墳の積石塚もみられる。そのほか摺鉢谷だけでも一三基の横穴式石室、内部主体が不明の円墳九基など総数三〇基を超える古墳が知られている。積石塚古墳の成立については、伝世鏡として知られる獣帯方格規矩四神鏡が出土した鶴尾神社四号墳の所見から、前期初頭からすでに土盛りに対応して築造されたものと考えざるをえない。

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改訂新版 世界大百科事典 「石清尾山古墳群」の意味・わかりやすい解説

石清尾山古墳群 (いわせおやまこふんぐん)

香川県高松市街南西部の石清尾山山塊に築かれた古墳群。土を盛った土塚もあるが,尾根上の高所に所在する主要古墳は,いずれも石を積んで墳丘を築いた石塚である。石塚には,前方後円墳(姫塚,石船塚,北大塚),方墳,円墳に加え,稀有な墳形である双方中円墳(猫塚,鏡塚)がみられる。猫塚で竪穴式石室,石船塚で割竹形石棺の存在が確認できる。副葬品として,猫塚から中国鏡,仿製鏡石釧(いしくしろ),筒形銅器銅剣,鉄刀剣,銅鏃鉄鏃などが知られる。中国鏡のうちに前漢代の内行花文精白鏡を含む。前漢鏡や銅剣は古墳の副葬品としては異例である。これら石塚の営造年代はほぼ4世紀とみてよい。なお,姫塚出土と伝える漢代中期の方格規矩四神鏡は,背文が磨滅し,かつ補修の小孔を有する。この遺品によって,梅原末治は1933年に鏡の伝世を指摘し,古墳の営造年代の研究に新しい局面をひらいた。
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国指定史跡ガイド 「石清尾山古墳群」の解説

いわせおやまこふんぐん【石清尾山古墳群】


香川県高松市峰山町・室町・宮脇町ほかにある古墳群。高松市中心街の南西に位置する標高230mほどの石清尾山山頂の稜線上には、数多くの積み石塚や盛り土墳が点在している。北大塚1・2・3号墳、石船塚、小塚、姫塚、石清尾山9号墳などの前方後円墳、猫塚、鏡塚の双方中円墳、さらに東南の尾根にある鶴尾神社4号墳(香川県最古の古墳とみられる、しゃもじ形の前方後円墳)など、形態も多様である。猫塚古墳は古墳群のなかでは最大規模で全長約96m、高さ5mあり、鏡塚古墳とともに双方中円墳という前方後円墳にもうひとつ方墳をつけたような特異な形をしている。また、西方寺山尾根・摺鉢谷・浄願寺山には、積み石塚と古墳時代後期の横穴式石室など内部が石組みの多数の盛り土円墳が分布する。古墳群は古墳時代前期から後期にわたる多様な古墳を有しており、瀬戸内海沿岸地方における古墳文化の研究に学術上貴重な遺跡群である。1934年(昭和9)に石船塚古墳が国の史跡に指定されていたが、1985年(昭和60)に山頂にある多数の古墳を一括して追加指定し、石清尾山古墳群と名称変更され、1989年(平成1)に鶴尾神社4号墳が追加指定された。古墳群はハイキングコースとして整備されている。JR予讃線ほか高松駅から車で約15分。

出典 講談社国指定史跡ガイドについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「石清尾山古墳群」の意味・わかりやすい解説

石清尾山古墳群
いわせおやまこふんぐん

香川県高松市峰山町の石清尾山塊にある積石塚(つみいしづか)古墳群。横穴式石室を有する後期古墳もみられるが、石を積み上げて墳丘を形成した積石塚古墳が特徴。双方中円墳(そうほうちゅうえんふん)の猫塚、鏡塚をはじめ、前方後円墳では姫塚、石船塚(いしふねづか)(割竹(わりたけ)形石棺)、北大塚、鶴尾神社4号墳などが注目される。これまでに本格的な発掘調査は行われていないが、猫塚の竪穴(たてあな)式石室からは銅鏡5面のほか、銅鏃(どうぞく)、筒形銅器、小銅剣が、鶴尾神社4号墳からは方格規矩四神鏡(ほうかくきくししんきょう)などが出土し、これらの古墳が4、5世紀のものであることを物語っている。積石塚古墳の性格については、大陸の影響説と、石材が多いという自然環境説の両者がある。石船塚は1934年(昭和9)国の史跡に指定された。

[松本豊胤]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「石清尾山古墳群」の意味・わかりやすい解説

石清尾山古墳群
いわせおやまこふんぐん

香川県高松市の中心市街地西部の石清尾山 (標高 232m) に点在する積石塚の古墳群。一般の古墳と異なり石を積んでいるのが特徴である。前方後円墳円墳がある。内部主体は竪穴式石室が多く,割竹形石棺をもつものもある。また双方中円墳という特殊なものもみられる。青銅鏡,筒形銅器,小銅剣,銅鏃などが出土しており,古墳時代前期のものといわれている。

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世界大百科事典(旧版)内の石清尾山古墳群の言及

【積石塚】より

…前者では,直径2m前後の円形を呈する積石塚が多数見つかり,弥生時代の集団墓の状況を思わせたが,後者においては,柄鏡式の前方後円墳の形状をした積石塚が出現しており,定型化した前方後円墳以前に,古墳時代の首長墓的な積石塚が出現しているといわれる。同じ四国の香川県高松市の石清尾山(いわせおやま)の丘陵上に分布する積石塚群(石清尾山古墳群)は著名である。ここでは石清尾山に産出する安山岩の石塊を利用して,竪穴式石室を包蔵する比較的大規模な前方後円墳,双方中円墳や円墳・方墳状の小形積石塚など,4,5世紀ごろの積石塚が30基前後知られている。…

※「石清尾山古墳群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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