砂の女(読み)すなのおんな

精選版 日本国語大辞典 「砂の女」の意味・読み・例文・類語

すなのおんな すなのをんな【砂の女】

小説安部公房作。昭和三七年(一九六二)刊。砂の穴に閉じ込められた男とその穴にいた女性との同棲生活を通して、閉塞した状況での生の可能性は、その状況の内にしかないことを寓意した作品

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デジタル大辞泉 「砂の女」の意味・読み・例文・類語

すなのおんな〔すなのをんな〕【砂の女】

安部公房長編小説。昭和37年(1962)刊。同年、第14回読売文学賞小説賞受賞昆虫採集の旅に出た男が、砂丘地帯に住む女との同棲を強制され、脱出不可能な砂の穴の中で、自己の存在と自由の認識を変換されていく。世界数十か国で翻訳版が出版され、昭和43年(1968)、フランスで最優秀外国文学賞を受賞するなど、海外での評価も高い。
原作とする映画。安部公房脚色勅使河原宏監督。昭和39年(1964)公開。カンヌ国際映画祭審査員特別賞受賞。

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改訂新版 世界大百科事典 「砂の女」の意味・わかりやすい解説

砂の女 (すなのおんな)

安部公房(1924-93)の小説。書下ろし長編として1962年に新潮社から刊行。昆虫採集に出かけた男が砂丘に閉じこめられるが,砂の穴で一人の女とともに生活しながら脱出を試みる。その失敗のはてに溜水装置を発明し,新しい態度で現実と闘いながら生きる決意をする。砂丘の描写,とくに日常生活への砂の支配的な影響力の叙述は,人間をとりまく出口のない状況を象徴している。そういうなかで現実の外へ逃げるのではなく,あたえられた条件を克服しながら自己変革をめざす生き方を,砂への主人公の態度を通じて見事に描いた。安部公房の中期の代表作で読売文学賞を受賞。勅使河原宏の監督で映画化されたことがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「砂の女」の意味・わかりやすい解説

砂の女
すなのおんな

安部公房(こうぼう)の長編小説。1962年(昭和37)新潮社より書下ろし刊行。昆虫採集の旅に出た仁木順平は、強制的に砂の壁の中に閉じ込められ、ある女との生活を強いられる。襲いくる砂と格闘する過酷な日々。やがて彼は、砂になり砂の目で物をみる体験を執拗(しつよう)に続け、新しい自己を発見し自由を獲得する。そのプロセスを寓意(ぐうい)的に追求した秀作。第14回読売文学賞を受賞。64年、勅使河原宏(てしがわらひろし)(1927―2001)の監督により映画化。英仏をはじめ20数か国で翻訳され、国際的作家としての地位を決定づけた。

[石崎 等]

『『砂の女』(新潮文庫)』

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デジタル大辞泉プラス 「砂の女」の解説

砂の女

①安部公房の小説。1962年刊行。第14回読売文学賞(小説賞)受賞。
②1964年公開の日本映画。①を原作とする。英題《Woman in the Dunes》。監督:勅使河原宏、脚色:安部公房、撮影:瀬川浩、音楽:武満徹、美術:平川透徹、山崎正夫。出演:岡田英次、岸田今日子、三井弘次ほか。カンヌ国際映画祭審査員賞受賞。第38回キネマ旬報ベスト・テンの日本映画ベスト・ワン作品。第19回毎日映画コンクール日本映画大賞、監督賞、音楽賞、美術賞受賞。第15回ブルーリボン賞作品賞、監督賞受賞。

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