砂丘地農業(読み)さきゅうちのうぎょう

改訂新版 世界大百科事典 「砂丘地農業」の意味・わかりやすい解説

砂丘地農業 (さきゅうちのうぎょう)

砂丘地で行われる農業で,砂丘地の特異な地形土壌・気象によって強い影響を受けている。起伏のある丘陵地であるので,高所は乾燥しやすく,くぼ地は降水が流出せず湿地となることがある。土壌は粗砂・細砂が95%前後を占め,粘土含量・腐植質含量が著しく少ないので,養水分の保持力が小さく,緩衝能力も小さい。また砂は比熱が小さいので,地温の昇降がはげしく,春先は地温上昇によって作物生育は促進されるが,夏は地温が異常に高くなり生育は阻害される。季節風による砂の移動もはげしく,地形が変わることもある。砂丘地における農業を安定させるためには,防風林などの防風・防砂施設,灌漑排水施設および赤土の客土,堆厩肥(きゆうひ)の施用などの土地改良が不可欠であり,土地の基盤整備に多額の投資が必要とされる。起伏が多いため機械化が困難であり,またセンチュウ病,ウイルス病などの被害のひろがる速度が速く,肥効が不安定であるなどの欠点がある反面,通気がよく,施肥の調節や耕起作業が楽にできるなど栽培上活用できる利点もある。作物はこのような利点を生かして栽培できるものが選ばれ,好気性作物のタバコ,トマト,キュウリ,深耕・掘取りなどに労力を多く要する作物のダイコン,ナガイモ,ゴボウ,アスパラガス,砂土で外観,品質がよくなる作物のラッキョウスイカチューリップイチゴなどが栽培されている。また春先の地温上昇を利用して早掘りサツマイモ,促成果菜類などの栽培も行われる。これらの作物の栽培にあたっては合理的な輪作体系を組むことが重要で,たとえば鳥取砂丘ではスイカ-ダイコン-ヤマノイモ-ジャガイモの輪作が行われている。
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百科事典マイペディア 「砂丘地農業」の意味・わかりやすい解説

砂丘地農業【さきゅうちのうぎょう】

海岸などの砂丘地を利用して野菜や花卉(かき)などの栽培を営むこと。砂丘地は水田には適さず,畑地としても干害と地力不足のため生産が不安定である上に,砂の害が強いため開発が遅れていた。しかし昭和30年代から,防砂林防風林スプリンクラー,耕作機械の導入などにより,地温が高く排水が良好で深耕しやすいなどの利点をいかして,ナガイモ,アスパラガス,ラッキョウ,スイカ,トマト,花卉球根類などが栽培されるようになった。

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