日本大百科全書(ニッポニカ) 「砂糖漬け」の意味・わかりやすい解説
砂糖漬け
さとうづけ
砂糖の防腐効果を利用し、果実、豆、野菜などの長期保存を目的に、高濃度の砂糖を染み込ませたもの。紀元前5世紀ごろ、インドではすでに果実を砂糖に漬けたものがつくられていたようである。日本で砂糖漬けがつくられるようになったのは、砂糖が自由に使われるようになった江戸時代中ごろからである。砂糖は濃度が高いとき、材料から強く脱水するとともに水分を完全に捕捉(ほそく)し、このため微生物は繁殖できず、防腐効果が発揮される。この際砂糖の量は、そこにある水分に対して飽和量以上に必要である。塩漬けとは異なり、砂糖味は濃度が高くても、そのまま食用とすることができる利点があり、食品の酸化防止作用もある。
砂糖漬けの作り方には、砂糖液で煮る、砂糖液に浸す、砂糖をふりかけて重石をする、といった方法がある。材料を適当な大きさに切り、あらかじめ水煮して、組織を軟化させると同時に苦味やアクを除いておく。砂糖漬けに用いる砂糖は、純度の高いものが適している。
中国には青ウメ、ナツメ、ハスの実、蓮根(れんこん)などの砂糖漬けがある。日本では各地に砂糖漬けの名物があり、その土地特有の果実や野菜などが使われている。その代表的なものに、ザボン(ブンタン)の柔らかい中皮を用いてつくった文旦(ぼんたん)漬け(鹿児島)、蓮根、ニンジン、ゴボウ、リンゴ、フキ、ワラビ、ショウガなど山野の幸を砂糖漬けにした五智果(ごちか)(大阪)、小さいナスを姿のまま用いた初夢漬け(千葉)、名物の秋田ブキの茎を用いた蕗(ふき)の砂糖漬け(秋田)などがある。
また、マロングラッセや甘納豆、菓子材料として使うアンゼリカ、ドレンチェリー、ジンジャー、ペアーなどのクリスタルフルーツ、オレンジ、シトロン、レモン、メロンなどのピール(皮)も砂糖漬けの一種である。
[河野友美・大滝 緑]