硫化ナトリウム(読み)りゅうかナトリウム(英語表記)sodium sulfide

精選版 日本国語大辞典 「硫化ナトリウム」の意味・読み・例文・類語

りゅうか‐ナトリウム リウクヮ‥【硫化ナトリウム】

〘名〙 (ナトリウムはNatrium) ナトリウムの硫化物白色またはピンクの粉末。化学式は Na2S 人絹の脱硫、硫化染料製造・染色、皮革脱毛などに利用。硫曹。

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デジタル大辞泉 「硫化ナトリウム」の意味・読み・例文・類語

りゅうか‐ナトリウム〔リウクワ‐〕【硫化ナトリウム】

ナトリウム硫化物無色の結晶。等軸晶系吸湿性潮解性がある。水溶液は強いアルカリ性を示す。硫化染料、皮革の脱毛剤パルプ蒸解に用いられる。硫化ソーダ化学式Na2S

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改訂新版 世界大百科事典 「硫化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

硫化ナトリウム (りゅうかナトリウム)
sodium sulfide

ナトリウムと硫黄の化合物で,一硫化物のほかにポリ硫化物が知られている。

化学式Na2S。無色立方晶系の結晶。アンチ蛍石型構造,格子定数a=6.526Å。融点1180℃。比重1.86。潮解性。水100gへの溶解度18.06g(18℃)。エチルアルコールに微溶。エーテルに不溶。水溶液加水分解のため強いアルカリ性を呈し,酸によって硫化水素を発生する。硫黄を溶かしてポリ硫化物をつくる。水溶液から48℃以下で9水和物,それ以上で6水和物,5.5水和物を生ずる。9水和物は正方晶系柱状晶。純粋なものは無色であるが,通常ポリ硫化物を生じて黄色を帯びる。融点50℃,比重2.71(20℃)。潮解性があり,920℃で分解する。水に易溶。エチルアルコールに難溶。

 工業的には,水酸化ナトリウムの水溶液に,石油化学工業から得られた廃ガスの硫化水素を飽和させて硫化水素ナトリウムとし,これに等量の水酸化ナトリウムを加えて加熱,60%程度まで濃縮して,冷却固化,固形品あるいはフレークとする。したがって市販品は水和物が多く,結晶品は5.5水和物,フレークは2水和物である。エチルアルコール中で水酸化ナトリウムと硫化水素を反応させ,さらに水酸化ナトリウムで中和した溶液からは5水和物が得られる。無水和物は激しく水素を通じながら加熱脱水してつくる。染色助剤,硫化染料の原料および中間物,皮なめしの脱毛剤,レーヨンおよびセロハンの脱硫,クラフトパルプ用蒸解剤,浮遊選鉱剤などに用いられる。きわめて腐食性が強いので取扱いに注意を要する。なお,水酸化ナトリウムに硫化水素を通じるさいに得られる硫化水素ナトリウムNaHSは無色潮解性粉末で,比重1.79。約350℃の温度で融解して,黒色液体となる。

化学式Na2Snn=2,3,4,5)。一般に一硫化ナトリウムと計算量の硫黄との熱時反応で得られる。いずれも水に易溶,エチルアルコールに可溶の有色潮解性結晶。Na2S2は淡黄色結晶粉末。融点445℃。比重1.97。5水和物がある。Na2S3は黄色粉末。融点224℃。比重1.93。3水和物は融点320℃。Na2S4は暗黄色結晶粉末。融点268~270℃。比重2.05。6水和物と8水和物がある。Na2S5は赤色結晶粉末。融点185℃。分解しやすい。6水和物がある。
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化学辞典 第2版 「硫化ナトリウム」の解説

硫化ナトリウム
リュウカナトリウム
sodium sulfide

Na2S(78.04).水酸化ナトリウムの水溶液に硫化水素を飽和させて得られる硫化水素ナトリウムに,水酸化ナトリウムを加え,冷所に放置すると九水和物が得られる.水和物を水素気流中で熱すると無水物となる.無水物は無色の立方晶系.密度1.86 g cm-3.融点950 ℃.空気中で酸化されてチオ硫酸ナトリウムを生じ,また水分と二酸化炭素を吸収して炭酸ナトリウムと硫化水素を生じる.九水和物は無色の正方晶系柱状晶.密度1.43 g cm-3.50 ℃ で融解し,強熱すると分解する.潮解性で,無水物,水和物ともに水によく溶け,強アルカリ性を示し,酸に溶けて硫化水素を発生する(二酸化炭素を含む水(炭酸水)によっても分解される).エタノールに難溶,エーテルに不溶.硫黄を溶解して多硫化ナトリウム(Na2Snn = 2,3,4,5)を生じる.四硫化ナトリウムNa2S4[CAS 12034-39-8]は黄色の等軸晶系.融点275 ℃.水,エタノールに可溶.水溶液は空気に触れると硫黄を遊離する.有機ニトロ化合物の還元剤,硫化染料の製造,脱硫剤,皮なめし用の脱毛剤,パルプの蒸解剤,分析試薬,半導体の製造,写真用試薬,ナトリウム-硫黄電池の電解質,廃液などの汚染重金属の硫化剤などに用いられる.皮膚を腐食する.有害.[CAS 1313-82-2]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

硫化ナトリウム
りゅうかなとりうむ
sodium sulfide

ナトリウムと硫黄(いおう)の化合物。通常はナトリウムの一硫化物のことをいい、他はポリ硫化ナトリウムとよばれる。水酸化ナトリウムの水溶液に硫化水素を飽和させて硫化水素ナトリウムの水溶液とし、当量の水酸化ナトリウムを加えて48℃以下で濃縮すると、九水和物が得られる。それ以上の温度では六水和物、5.5水和物などが晶出する。無水和物とするには水素気流中で加熱脱水する必要がある。ナトリウムと硫黄の直接反応によっても得られるが、工業的には無水硫酸ナトリウムを石炭粉末で熱還元する方法が行われる。白色または淡紅色の粉末。空気中で酸化されてチオ硫酸ナトリウムに変わる。水に溶け、エタノール(エチルアルコール)にわずかに溶けるがエーテルには不溶。水溶液は強アルカリ性を呈し、硫黄を溶解して黄色のポリ硫化ナトリウムNa2Sx(xは2、3、4、5)を生成する。酸を加えると硫化水素を発生する。硫化染料の製造、ニトロ化合物の還元、皮なめしの脱臭剤、写真のセピア調色剤、陽イオンの系統的定性分析用試薬などに用いられる。

[鳥居泰男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説

硫化ナトリウム
りゅうかナトリウム
sodium sulfide

化学式 Na2S 。硫化ソーダともいう。無水塩は無色立方晶系結晶。吸湿性が強く,不安定で,空気に触れると変色する。衝撃あるいは急激な加熱により爆発することがある。比重 1.86,融点 950℃。水によく溶け,溶液は強アルカリ性を呈する。水溶液から 48℃以下で9水塩が析出する。加熱すると 50℃で結晶水に融ける。酸化されやすく,酸化するとチオ硫酸ナトリウムとなる。工業的には芒硝を無煙炭で還元して製する。硫化染料,人絹,スフなどの脱硫剤,染色,脱毛剤,クラフト紙,写真 (セピア調色用) ,ニトロ化合物の還元などに用いられる。

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