硫化窒素(読み)リュウカチッソ

化学辞典 第2版 「硫化窒素」の解説

硫化窒素
リュウカチッソ
nitrogen sulfide

SとNからなる化合物の総称窒化硫黄(sulfur nitride)ともいう.N2S2,N4S4,N2S4,N6S5などがある.NOに対応するNSは,金属原子に配位した形で存在する.【】N2S2(92.14):N4S4蒸気を銀綿や銀網を通して得られる.無色の揮発性固体.分子構造は平面四角形.N4S4と同様爆発性がある.35 ℃ 以上で N2 とSに分解する.有機溶媒に可溶.常温で,ポリマーをつくりやすい.[CAS 25474-92-4][別用語参照]ポリ(硫化窒素)】N4S4(187.29):NH3ガスをS2Cl2またはSCl2の温かいCCl4溶液に通して得られる.サーモクロミズムを示す空気中で安定な固体.-190 ℃ :無色,25 ℃ :黄橙色,100 ℃ :赤.融点178.2 ℃.密度2.22 g cm-3(15℃).粉砕,衝撃,摩擦,および急激な加熱などにより爆発する.分子構造は八員環で,図に示すように,N原子がつくる平面四角形と,S原子がつくる四面体の組み合わせとなっている.ほかのS-N結合をもつ化合物の原料に用いられる.[CAS 28950-34-7]【】N2S4(156.27):N4S4とSのCS2溶液をオートクレーブ中で加熱して得られる.暗赤色の固体.融点23 ℃.密度1.71 g cm-3(20 ℃).反磁性.N原子が1,3位を占める六員環構造で,S-N-S-N-Sはほぼ平面にあり,半いす形構造.[CAS 79796-31-9]【】N6S5(244.37):0 ℃ でS4N5臭素で酸化するか,S4N4Cl2と(CH3)3SiNSNSi(CH3)3を反応させると得られる.空気に活性な爆発性のある黄褐色の固体.45 ℃/1.33 Pa で昇華する.N4S4のS…S間にN2Sで架橋した構造をとっている.[CAS 68993-02-2]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「硫化窒素」の意味・わかりやすい解説

硫化窒素 (りゅうかちっそ)
nitrogen sulfide

硫黄と窒素との化合物の総称。窒化硫黄とも呼ばれる。

化学式N4S4。N原子とS原子が組み合わさって図に示すように一つのかごをかたちづくっている。塩素を飽和した四塩化炭素中で二塩化二硫黄S2Cl2アンモニアを通じて生じた沈殿からジオキサンで抽出すると得られる。

 6S2Cl2+16NH3─→N4S4+8S+12NH4Cl

また塩化アンモニウムと二塩化硫黄と反応させても生じる。室温で橙黄色固体。-30℃で黄色,100℃では橙赤色となる。融点178℃,沸点~185℃。かなり不安定で,加熱,衝撃により爆発的に分解して窒素と硫黄になる。比重2.22。水に不溶。ベンゼン,二硫化炭素,エチルアルコール,エーテルに可溶。アルコール溶液中で塩化スズ(Ⅱ)SnCl2と反応させると環状構造をもつ四イミド四硫黄S4N4H4を生ずる。また,ジメトキシエタン中でカリウムで還元するとS4N4⁻イオンが得られる。

四硫化二窒素N2S4は四硫化四窒素N4S4と硫黄を反応させて得られ,暗赤色の液体または灰色の固体である。融点23℃。二硫化二窒素N2S2は四硫化四窒素N4S4を真空中で300℃に加熱すると得られ,ほとんど無色の結晶。常温でも揮発性で昇華しやすい。硫化窒素重合体(NS)xは二硫化二窒素N2S2を真空中で長期間放置すると得られ,金属光沢を有する固体。粉末を圧縮したものの電気抵抗はゲルマニウムに近い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「硫化窒素」の意味・わかりやすい解説

硫化窒素
りゅうかちっそ
nitrogen sulfide

硫黄と窒素との化合物の総称。化合物名としては窒化硫黄としたほうが正しいとの説もある。 (1) 四硫化四窒素  N4S4 。常温では橙黄色の結晶であるが,-30℃で黄色,100℃以上で橙色を呈する。単斜晶系。 160℃で昇華。比重 2.22。不安定で加熱,衝撃により爆発する。水に不溶。 (2) 二硫化二窒素  N2S2 。無色の美しい結晶。常温でも昇華し,不安定で加熱,衝撃により爆発する。 (3) 四硫化二窒素  N2S4 。暗赤色の液体または灰色の固体で,融点 23℃,比重 1.71。悪臭がある。不安定で0℃においても分解を始める。水に不溶。 (4) 硫化窒素重合体  (SN)n 。固体で金属光沢がある。単斜晶系。薄層の透過光は深青色である。化学的には安定で,水に不溶である。

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