確認訴訟(読み)カクニンソショウ

デジタル大辞泉 「確認訴訟」の意味・読み・例文・類語

かくにん‐そしょう【確認訴訟】

特定権利または法律関係存否について争いがあるときに、その存否を確認する判決を求める訴訟。確認の訴え。

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精選版 日本国語大辞典 「確認訴訟」の意味・読み・例文・類語

かくにん‐そしょう【確認訴訟】

〘名〙 特定の権利の存在、不存在または法律関係の成立、不成立を主張して、その確定判決を求める訴訟。権利の存在を主張するものを積極的確認訴訟、不存在を主張するものを消極的確認訴訟という。確認の訴え。確定の訴え。

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改訂新版 世界大百科事典 「確認訴訟」の意味・わかりやすい解説

確認訴訟 (かくにんそしょう)

原告が特定の権利あるいは法律関係の存在または不存在を主張し,その確認を求める訴えをいう。〈確認の訴え〉ともいう。

たとえば,ある土地についてAの所有権を争うBがいる場合に,AがBを被告としてその土地の所有権が自己にあることの確認を求めたり,CはDから借金したが債務は全部支払済みだと思っていたところ,Dが執拗に債務の返済を迫るので,CがDを相手どって債務は存在しない旨の確認を求める場合などが,これにあたる。

 給付訴訟給付の訴え)が相手方に対して〈~をせよ〉とか〈~をするな〉というようになんらかの作為または不作為による給付の実現を求めるのに対して,確認訴訟は,一般に,現状の不安定から生じる紛争の悪化ないし続発を防止するために,権利または法律関係を明確にすることを主眼とする。

 確認訴訟で勝訴しても,原告には,その判決でもって相手方に対して強制力をもって権利を実現する効力(執行力)は与えられないのが原則である。ここに給付訴訟・給付判決との顕著な機能的差異がある。したがって確認訴訟は,その対象となる実体権が社会的にひろく通用力をもつほどに確立され,しかも人々が権利や法律関係などの規律に即して自主的に生活行動をとることが期待されるほどに法意識が向上し浸透した社会ではじめて,その機能を十分に発揮できる。歴史的にも,確認訴訟が独立の訴訟類型として一般に承認されるに至ったのは,比較的新しい時期(ドイツでは19世紀の中葉以後)においてである。

 確認訴訟が実際によく利用される場合としては,所有権その他の物権の存否確認,賃貸借雇用などの継続的な法律関係の確認,親子関係などの身分関係の存否確認などがあげられる。これらの権利または法律関係から派生する個々の請求権を主張するよりも,その根源をなす権利または法律関係の存否自体を訴訟の対象とするほうが,紛争解決にとってより望ましい場合も少なくない。どういう場合に確認訴訟を利用することを正当化するだけの利益または必要性が認められるか(これを確認の利益という。〈訴えの利益〉の項を参照)が問題であるが,上記の確認訴訟の制度目的に照らして個々の紛争ごとに判定していくほかない。

 確認訴訟において原告の申立てを認容する判決では,原告の主張どおりの確認の宣言を掲げ,この場合にはその権利関係の存否について〈もはや争うことができない〉という効力(既判力)が生じる。これに対して,原告の申立てを棄却する判決には,原告の主張する権利または法律関係とは逆のことがらが既判力で確定する。いずれの場合も,確認判決と呼ばれる。
執筆者:

行政訴訟においても確認訴訟の形式が存在する。確認訴訟の種類としては,行政事件訴訟法3条4項および5項が抗告訴訟の一形式として定めている〈無効等確認の訴え〉と〈不作為の違法確認の訴え〉がある。そのほか法定外の無名抗告訴訟として,私人の公法上の〈義務不存在確認の訴え〉や行政庁の〈処分権限不存在確認の訴え〉,あるいは行政庁の〈作為義務確認の訴え〉などが学説上考えられている。

 まず,〈無効等確認の訴え〉とは,行政庁の処分もしくは裁決の存否またはその効力の有無の確認を求める訴訟をさす。〈無効等確認の訴え〉については出訴期間や審査請求前置主義による出訴の制限がなく,したがって,とくに取消訴訟の出訴期間が経過した場合に,行政庁が無効の処分を有効適法であるとしてその後続処分または執行処分をする危険性があるとき,あるいは処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する公法上の当事者訴訟や通常の民事訴訟によって権利救済が得られない場合に,この訴訟形式が有用になる。つぎに,〈不作為の違法確認の訴え〉とは,行政庁が法令に基づく申請に対し,相当の期間内になんらかの処分または裁決をすべきにもかかわらず,これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をさす。もっとも,〈不作為の違法確認の訴え〉は,行政庁の不作為自体の違法の確認を求めるだけであって,行政庁のなすべき義務の内容を確定するわけではないから,救済方法としては不十分なものである。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の確認訴訟の言及

【訴え】より

…〈請求の趣旨〉とは,訴えの結論として何を求めるかを簡潔に表示するものであり,勝訴判決の主文に照応する。訴えは,求められる内容から,給付の訴え(給付訴訟),確認の訴え(確認訴訟),形成の訴え(形成訴訟)に分類されるが,このそれぞれの請求の趣旨は,たとえば,被告は原告に金100万円を支払えとの判決を求める,原告が某建物について所有権を有することを確認するとの判決を求める,原告と被告とを離婚するとの判決を求める,というように記述される。これは,〈訴訟上の請求〉(または単に,請求),訴訟物と講学上呼ばれるものにほぼ対応する。…

※「確認訴訟」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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