磯千鳥(読み)いそちどり

精選版 日本国語大辞典 「磯千鳥」の意味・読み・例文・類語

いそ‐ちどり【磯千鳥】

[1] 〘名〙
磯辺にいる千鳥浜千鳥。《季・冬》
※千五百番歌合(1202‐03頃)九四七番「たびねからききやしのばぬいそ千鳥なれたるあまの袖をとはばや〈源通光〉」
② ヒゲマキナワボラ科の巻き貝の一種。房総より熱帯太平洋に広く分布し、イタボガキなどの殻上に着生する。貝殻は笠形で、長さ約二・五センチメートル、高さ約一センチメートル。殻の表面は黄褐色の殻皮でおおわれている。殻頂は後ろにつき出てらせん状になっており、殻頂より三条のはっきりした放射稜がある。
[2] 箏曲。地唄。生田流(山田流でも演奏)。手事物。菊岡検校(けんぎょう)が地唄として作曲、これに八重崎検校が箏の替手(かえで)をつけた。橘岐山作詞。文政・天保年間(一八一八‐四四)に成る。光源氏が須磨で、過去の華やかな生活を追懐する気持をうたう。

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デジタル大辞泉 「磯千鳥」の意味・読み・例文・類語

いそ‐ちどり【×磯千鳥】

磯辺にいる千鳥。浜千鳥。 冬》「―足をぬらして遊びけり/蕪村
地歌箏曲そうきょく曲名。江戸後期、橘岐山の詞句菊岡検校けんぎょうが地歌として作曲、これに八重崎検校が箏の替手かえでをつけたもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「磯千鳥」の意味・わかりやすい解説

磯千鳥 (いそちどり)

地歌・箏曲の曲名。三弦菊岡検校,箏は八重崎検校作曲。箏が華やかに活躍する京風手事物の一つ。作詞は橘岐山で,浜辺の千鳥に寄せて,不遇な女性の悲しみを歌っている。《源氏物語》の〈須磨〉から取材しているともいわれるが,確証はない。手事(てごと)のちらし部分に合わせるように,後に幾山検校が《萩の露》のちらしを作曲している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「磯千鳥」の意味・わかりやすい解説

磯千鳥
いそちどり

地歌・箏曲の曲名。菊岡検校作曲の京風手事物。箏の手付は八重崎検校。橘岐山作詞。長瀬勝男一が明治期に山田流に移曲し,臨終の枕辺で白勢検校に教えたといわれる。ままならぬ男女の仲を浜辺にわびしく鳴く磯千鳥に託して歌ったもの。不遇の娘お磯の心情を歌っているとも,彼女の追善曲とも伝えられる。前歌-手事 (ツナギ・マクラ・手事・中チラシ・本チラシ) -後歌という構成。中チラシには千鳥の鳴き声の描写がある。三弦は二上り (九州系では低二上り) で始り,手事で高三下り,後歌で高本調子。箏は平調子から,手事以降は中空調子。幾山検校作曲の『萩の露』のチラシが,この曲のチラシと合うように作曲されたことでも知られる。演奏会によく出され,追善曲としても演奏される。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「磯千鳥」の解説

いそちどり【磯千鳥】

岡山の日本酒。酒名は、近くの浜が千鳥舞う風光明媚なところであったことに由来。純米吟醸酒、本醸造酒などがある。酒質は淡麗。原料米は朝日、アケボノなど。蔵元の「磯千鳥酒造」は宝暦元年(1751)創業。所在地は浅口郡里庄町新庄。

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