礼銭(読み)れいせん

精選版 日本国語大辞典 「礼銭」の意味・読み・例文・類語

れい‐せん【礼銭】

〘名〙
① 礼をするために用いる金銭礼物
大乗院寺社雑事記‐寛正六年(1465)一一月二二日「自百姓方千五百疋礼銭出之」 〔後漢書‐羊続伝〕
室町時代特定祝儀の時に、幕府へ奉った金銭。また、幕府の役人に贈った賄賂
※狂歌・金言和歌集(1492‐1501頃)「礼銭(レイセン)におもひつくみのあぢきなさ身をうしなはんこともしらずて」

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デジタル大辞泉 「礼銭」の意味・読み・例文・類語

れい‐せん【礼銭】

謝礼として渡す金銭。
室町時代、特定の祝儀の際、幕府に献上した金銭。

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改訂新版 世界大百科事典 「礼銭」の意味・わかりやすい解説

礼銭 (れいせん)

一般的にはお礼のために金銭を送ることであるが,中世とりわけ室町・戦国期に盛んで,何らかの権利を与えられることの代償として,下から上へ差し上げるものを礼物(れいもつ),礼銭といった。朝廷,幕府などの官職役職への補任や継目安堵(つぎめあんど)(将軍などの代替りに際して,家臣らが前代同様に所領を安堵してもらう),課役免除などの礼として出される場合が多く,公私混同の結果として賄賂が公然と利権化して行われたものともいえる。例えば継目安堵の判物下付の礼銭でいえば,小早川氏は,1487年(長享1)継目安堵の御礼に上洛するに際し,庶子家や家臣に分担をさせ,土倉(どそう)に質入れを行って,400貫文弱を調達,上洛費用と礼銭分を調えている(《小早川家文書》)。応仁・文明の乱で,西軍の大内政弘の帰降に際しては,将軍御台日野富子に対して種々の名目で340貫文の礼物が進上されている。これらの礼銭は幕府家臣のみならず貴族・寺社に及び,東寺を例にとれば,管領,守護,奉行などに所領安堵,課税免除の礼銭,一献料を進上している。

 この礼銭進上の風習は上下すべてに及んだ。近江湖東の保内(ほない)などの座商人は諸所に立てられた新関の関料を免除されるために奔走し,その礼物・礼銭を国人領主,土豪などに出している。1512年(永正9)の追分新関では関屋に放火するなどの争いがおこり,結局関所を破棄してもらうために,馬,太刀と方々への礼物36貫文が入用であり,各商人団に割り当てている(《今堀日吉神社文書》)。一般村落にあっても同様で,和泉国日根野では,軍隊の駐留禁止の制札をもらうため,制札の代は2枚で200疋であるが,そのために動いてくれた〈内談之輩〉10余人への礼銭が2000疋に及んだ(《政基公旅引付》)。自治都市においても同様で,大山崎では礼銭によって軍勢駐留の禁制を方々から得ており,また音信の礼物として,朝倉義景に青銅50疋,六角義弼に青銅100疋,細川晴元には鳥目200疋を出している(《離宮八幡宮文書》)。こうした礼銭は取次衆へも必要であったから,実際には記録されている以上に莫大な入費が要った。
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