社会劇(読み)シャカイゲキ

デジタル大辞泉 「社会劇」の意味・読み・例文・類語

しゃかい‐げき〔シヤクワイ‐〕【社会劇】

社会問題主題とした演劇登場人物の属する環境階級などを重視して書かれたもの。イプセンの「人形の家」など。

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精選版 日本国語大辞典 「社会劇」の意味・読み・例文・類語

しゃかい‐げき シャクヮイ‥【社会劇】

〘名〙 劇中事件の社会的背景基盤、登場人物の属する社会的環境や階級などを重視する演劇、戯曲。社会的関心の強い思想性のある劇。イプセンの「人形の家」「民衆の敵」、ハウプトマンの「織工」、ゴーリキーの「どん底」などはその古典的作品

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改訂新版 世界大百科事典 「社会劇」の意味・わかりやすい解説

社会劇 (しゃかいげき)

一般には19世紀ヨーロッパのリアリズム演劇のなかで,近代社会のもろもろの問題をとりあげ現状を批判的に描いた作品を指す。〈社会問題劇〉または単に〈問題劇〉ともいう。フランスのデュマ・フィスやÉ.オージェの劇は〈問題劇pièce à thèse〉と呼ばれたが,問題の掘下げ方は表面的だった。C.F.ヘッベルの《マリア・マグダレーナ》(1844)やB.ビョルンソンの《新婚夫婦》(1865),《破産》(1875)などに続いて,イプセンが社会劇を確立したとされる。彼は《社会の柱》(1877)で資本家の偽善をあばき,《人形の家》(1879),《幽霊》(1881)で現代の夫婦関係を批判,《人民の敵》(1882)で大衆の利己主義を告発した。A.アントアーヌの〈自由劇場〉,O.ブラームの〈自由舞台〉など前衛的な小劇場は好んで社会劇をとりあげたが,その運動のなかでE.ブリューの問題劇やG.ハウプトマンの《日の出前》(1889),《織工》(1892)などが生まれた。世紀の変りめにはロシアのゴーリキー,イギリスのG.B.ショーが,独自の社会批判劇を書いている。しかし〈社会劇〉をリアリズムに限らず社会批判を含む劇一般を指す語と解すれば,ギリシア劇以来の少なからぬ作品がその範疇に入るだろう。エウリピデス《トロイアの女》,ローペ・デ・ベガの悲喜劇,レッシング《賢者ナータン》などは典型的な社会批判劇である。20世紀のB.ブレヒト,A.ミラー,P.ワイス,R.ホーホフートらもその正統的な継承者といってよい。日本でもイプセンの影響下に中村吉蔵,真山青果らが社会劇を書いたが,昭和期の久保栄,木下順二らにも現代社会を批判するすぐれた作品がある。
近代劇
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「社会劇」の意味・わかりやすい解説

社会劇
しゃかいげき
social drama

劇中の出来事や登場人物のおかれる状況を,社会的環境や社会問題との関連のなかで描いた演劇。近代以降に登場した形態で,市民劇写実劇は,しばしば社会劇の形をとる。 H.イプセンや G.B.ショーをはじめ B.ブレヒトの諸作品,M.ゴーリキーの『どん底』,A.ミラーの『セールスマンの死』などがその代表的な作品である。

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世界大百科事典(旧版)内の社会劇の言及

【近代劇】より

…このような時代背景の中で,個我の目覚めと市民的自由を追求した近代芸術は,必然的に同時代社会の諸矛盾に批判の光を投げかけるものとなった。近代リアリズム演劇もまた,社会問題から人間の内面的問題にまで及ぶ〈問題劇〉たる性格をあらわにする(社会劇)。この種の劇は既成劇場でなかなか受け入れられず,若い演劇人による〈小劇場〉運動によって広められていったが,その運動はヨーロッパの外までも波及し,日本では明治後期から形をなしてくる〈新劇〉運動の基盤ともなった。…

※「社会劇」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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