社会史論戦(読み)しゃかいしろんせん(英語表記)Shè huì shǐ lùn zhàn

改訂新版 世界大百科事典 「社会史論戦」の意味・わかりやすい解説

社会史論戦 (しゃかいしろんせん)
Shè huì shǐ lùn zhàn

1928年から30年代半ばにかけ中国社会の性質,中国史の発展段階をめぐって戦わされた論争。1927年の中国革命挫折は知識人に深い失望をもたらすと同時に,中国社会の現状をどう規定するか,中国革命の性格,対象,原動力前途はどうか,いかに中国史を時代区分するか,についての論争を呼び起こした。論争はおもに《新思潮》(潘東周,王学文--中共派),《動力》(厳霊峰,任曙--トロツキー派),《新生命》(陶希聖),《前進》(陳公博),《新月》(胡適)などの雑誌上で行われ,《読書雑誌》(王礼錫,胡秋原)が4回も〈社会史論戦特集号〉(1931-33)を出して最高潮に達するが,福建人民政府事変による同誌の廃刊中断,のちに農村社会性質論戦として再燃する。アヘン戦争後の中国社会を《新思潮》派は帝国主義侵略下の半植民地・半封建社会としたのに対し,《動力》派はすでに資本主義社会であるとみた。論争は,コミンテルンと中共中央の指導問題,スターリンとトロツキーの抗争アジア的生産様式論争,日本資本主義論争などと複雑に関連しているが,中国革命の路線決定に直接貢献したとはみられず,マルクス主義的な社会科学を中国に根づかせた点で一定評価が与えられよう。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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