精選版 日本国語大辞典 「社」の意味・読み・例文・類語
しゃ【社】
や‐しろ【社】
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中国古来の土地神,あるいはそれをまつる集団,集落をいう。その起源については諸説があって定まらないが,おおよそ原始集団の中心にある聖なる場所,その集団の保護神が祖先神であったといわれる。社は樹木,石,封土などを神のやどる標識とし,集団の人々は事あるごとにそこに集まって団結と親睦を図った。すなわち日食のような天変地異,大水などの災害が起きると,人々は社にいけにえを供え鼓を打って祈りを捧げた。戦いになると,出陣に当たって社に集合して,祭肉の分配にあずかり,いけにえの血を武器にぬって戦勝を祈願した。また車に社主(社神の位牌)を乗せて出征し,帰還すると俘虜を献じて戦の報告をした。社はまた集団内のもめごとを調停したり,国の法令を社人に伝達する場所でもあった。農業が発達すると,春には五穀豊穣を祈り,秋には収穫に感謝する〈春秋二社〉の祭祀が,社にとっての重要な行事となった。のちに農業神の稷(しよく)と合わせて社稷といい,祖先の宗廟の祭りと並ぶ国家の大切な祭儀とされた。
社の規模は《周礼(しゆらい)》に1社25家と記すが,100家,2500家といったものもあって一定しない。先秦には国家の太社,王社のほかに,諸侯の国社,侯社もあったが,漢代には滅び,代わって行政区画の県,郷,里にそれぞれ社が置かれ,里社の下には5家,10家といった小さな私社もあった。こうした郷村の社は,その後の社会変動にかかわりなく,ながく存続した。社の最大の行事である春秋二社のときには,村民はこぞって祭りの場所に集まり,祭祀が終わると,一同はお下がりの社飯酒肉を会食して旧交をあたため,ときには余興に歌舞演劇が行われた。この日には,遠くに出ている子弟も,里帰りして両親を見舞うのがならわしであったといわれる。
敦煌千仏洞の一室から発見されたいわゆる〈敦煌文書〉のなかに多数の社文書があり,この地域での9~10世紀の状況をうかがうことができる。それらの文書によると,社ごとに,結社の目的と運営方法,罰則を定めた〈社条〉がつくられた。社には社長,社官,録事の〈三官〉がいて社を統率し,社に関するすべての事はこの三官の裁断によった。社の行事の第1はここでも春秋二社の宴会であり,開催に先立って,録事から社人たちに,その日時と集合場所を知らせる〈社司転帖〉が回された。これと並ぶ重要な事業は〈逐吉追凶〉つまり慶弔時の助け合いであった。ことに社内に不幸があると,録事は早速に回状を出して通知し,知らせをうけた社人たちは,真夜中であってもただちに喪家にかけつけて葬儀の準備をしなければならなかった。敦煌は仏教都市であったから,当然,社は諸種の仏教行事に参加し法会の援助を行った。それには,三長月斎(1月,5月,7月の各1日に仏寺で行う法会),1月15日の燃灯会,2月8日の釈迦の降誕を祝う行像会,7月15日の盂蘭盆(うらぼん)会,仏像の印を紙や布に押す印沙仏会などがあり,蘭若(寺院)や仏窟の修理造営を援助することもあった。社に入るのは任意であったが,いったん入社すれば社条の規則を守ることが強く求められ,所定の時間に遅れたり,不参したりすると重く罰せられた。社人には官人や僧侶を含み,ほかに女人社や同業者の社などもあった。このような社の組織と活動とは,当時の中国内地でも同様に行われたとみられる。
宋代には,河北の辺境に弓箭社とよばれる自衛団が結ばれ,没命社,亡命社,覇王社などの〈無頼漢〉の結社が各地にみられた。こうした郷村の自治的な組織は,しばしば地方行政に利用された。隋代では,社ごとに義倉を置き,収穫に応じて穀物を蓄えて飢饉に備える制度が始められ,これを社倉ともいった。また元の世祖のとき,全国に社制が施かれた。これは,およそ50家で1社をつくり,社内の農事に明るい高年者を社長にえらんで,社を統率させた。社長は,社人の農耕を督励し,水利灌漑の設備を充実し,蝗の駆除,副業の奨励,荒地の開墾などを行うとともに,社学を設けて社人の教化にも当たった。このように元代の社制は,勧農と教化とをおもな任務とするかなり自治的な郷村組織であった。ただし社制は都市部でも施行され,このほうは遊手無頼の徒を教戒して,治安をよくするのを任務とした。もっとも郷村でも,元末になって反乱があいつぎ,社会不安が増大すると,勧農よりは治安維持の方が重んじられるようになった。この制度は元が滅ぶと廃止されたが,明代でも社の名称は行政区画として残るものがあり,社会は清代まで行われ,清末にはこれが地方自衛組織の中心機関に変わるものが多かった。
一方,宋代以後,文人のあいだに詩文を作り批評しあう詩社の結成がさかんになり,明末の復社のように,それが政治結社に発展することもあった。仏教,道教などの信仰団体のほか,芸人たちの職能別の組織も社とか会との名称がつけられ,もと社日の祭りを指した〈社会〉の語が,宋代にはこれらの団体をも指すようになった。
執筆者:竺沙 雅章
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兵庫県南東部、加東郡(かとうぐん)にあった旧町名(社町(ちょう))。現在は加東市の中央部を占める一地区。1912年(大正1)町制施行。1955年(昭和30)社町は福田、米田(よねだ)、上福田、鴨川(かもがわ)の4村と合併。2006年(平成18)滝野(たきの)、東条(とうじょう)の2町と合併、市制施行して加東市となる。国道175号・372号、中国自動車道が通じ、滝野社インターチェンジがある。西端を加古川が流れ、中位・低位段丘面の社台地は姫路平野の北端にあたり、穀倉地帯である。東部は第三紀の丘陵、北東部は山地で占められる。中心地区の社は式内社佐保神社の門前町として発達し、地名もそれに由来する。また京都から西国へ通じる丹波(たんば)街道の宿場町、近隣の市場町でもあった。嬉野(うれしの)の丘陵地は県の学園都市構想により国立兵庫教育大学、県立嬉野台生涯教育センター、県立教育研修所などが置かれた。また、社サイエンスパーク(工業団地)にはエレクトロニクスなどの先端企業が進出している。古社寺が多く、清水(きよみず)寺は西国三十三所第25番札所、朝光寺(ちょうこうじ)は7世紀の開基で、本堂(国宝)のほか文化財も多い。上鴨川住吉神社(すみよしじんじゃ)の神事舞は中世の田楽(でんがく)、能舞を伝え、国の重要無形民俗文化財。
[二木敏篤]
『『社町史』全5巻(2001~ ・社町)』
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…后土(こうど)と同様の意でも用いられる。ヤシロとは,本来屋代(やしろ)すなわちミヤ(御屋),宮殿に対してそのかわりの斎庭(ゆにわ),斎場のことで,地を祓い清めただけの場のこと,またそれより少し進んでわずかに人家の形をしたのみの建物のことをいい,のち社の字をあて,神をまつる殿舎をいうようになったものとみられている。ホコラはホクラ(神庫,宝庫,宝蔵)より転じた語で,神をまつる殿舎のこと。…
…神道の信仰にもとづいて,神々をまつるために建てられた建物,もしくは施設を総称していう。やしろ(社),ほこら(祠)。一般には,神が鎮座する本殿,神を礼拝しさまざまな儀礼を行う拝殿,本殿・拝殿などを囲む瑞垣(みずがき),神域への門に相当する鳥居などからなり,そのほかに神宝を納める宝殿,参拝者が心身を浄めるための手水舎(ちようずや),神に奉納する神楽(かぐら)を奏する神楽殿,神官の執務のための社務所,神苑などさまざまな施設を併せている。…
…一般的には中・近世ヨーロッパにおける商工業者の職種ごとの仲間団体をさすが,このような同職仲間的な団体は,広く前近代の日本,中国,イスラム社会,インドにもみられる。ドイツ語ではギルドGilde,ツンフトZunft,インヌングInnung,フランス語ではコンパニオナージュcompagnonnage,イタリア語ではアルテarteとよばれる。…
…中国や朝鮮,日本で凶年など非常のときに窮境を救うための米などを貯蔵しておく米倉。隋代にはじまった義倉は村鎮に設置され,無償で配給されたが,管理は一種の自治団体である社が行ったので,別に社倉と呼ばれた。宋代になって最も発達し,村落が管理する社倉と州県官が管理する義倉とがはっきり区別された。…
…中国において社(土地神)を祭る祝日をいう。一般に春秋2回行われるが,その日は時代によって異なる。…
…〈むら〉とは農林水産業,すなわち第1次産業を主たる生業とするものの集落単位の総称であり,商工業者を主とする〈まち〉に対応する概念である。したがってそれは人類の歴史とともに古く,地球上どこにでも存在する普遍的かつ基本的な社会集団であるといえるが,〈むら〉のしくみや経済的機能は,民族により,また同じ民族であっても地域により,時代によって,きわめてまちまちである。ましてやその人口の多寡,村境域の構造,集落の形態,耕地のあり方,さらにはその法的な性格などということになると,〈むら〉とはこういうものだということを一律に規定することは,はなはだ困難である。…
※「社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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