祖堂集(読み)そどうしゅう(英語表記)Zǔ táng jí

改訂新版 世界大百科事典 「祖堂集」の意味・わかりやすい解説

祖堂集 (そどうしゅう)
Zǔ táng jí

中国,禅宗史書の一つ。20巻。五代の南唐保大10年(952)の成立。泉州招慶寺の浄修禅師文僜ぶんとう)の下にいた静筠二禅徳の編。過去七仏にはじまって,インドの28代,中国の6代を経て文僜に至る234人の祖師の名と,伝灯相承(そうじよう)の次第を述べたもの。祖堂とは,祖師の堂奥,つまり奥義の意である。文僜は保福従展につぎ,保福は雪峰義存につぐ。義存は,唐末五代の中国禅の代表的存在で,その弟子は1700とよばれた。本書は,このような雪峰に集大成される唐代各地の祖師禅の成果で,文僜には別に《千仏新著諸祖頌》があって,迦葉(かしよう)より馬祖に至る祖師の賛を集めていて,本書のそれぞれの章末に付録される。本書に遅れること50年,北宋の1004年(景徳1)に《伝灯録》30巻が成立し,勅許によって入蔵,本書は《伝灯録》の盛行に圧せられて,中国にその伝を断つが,高麗高宗が彫造する高麗版《大蔵経》の補版として,その32年(1245)に開版され,現在の本は,韓国慶尚南道の伽倻山海印寺に存する版木により,今世紀にはじめて印刷された。《伝灯録》が各時代にわたって開版され盛行したために,その本文にかなりの異本を生むのに比し,本書は今まで読まれなかったために,かえってよく原型を保存しており,語文,思想歴史などの面で,敦煌文献につぐ新資料として高い価値をもっている。とりわけ,馬祖と石頭にはじまる江西湖南の禅と,これを伝える新羅入唐僧の動きについて,他にみられない資料を含む。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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