神居古潭変成帯(読み)かむいこたんへんせいたい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「神居古潭変成帯」の意味・わかりやすい解説

神居古潭変成帯
かむいこたんへんせいたい

北海道旭川(あさひかわ)市の西方神居古潭を中心に南北に細長く300キロメートルにわたって延びる変成帯。神居古潭帯ともいう。ぶどう石‐パンペリー石相および藍閃(らんせん)石片岩相の高圧型の変成作用によって特徴づけられ、藍閃石、ローソン石、アラゴナイト、ひすい輝石など比較的低温で高圧のもとで再結晶する鉱物を含んでいる。また、蛇紋岩メランジュの存在も知られている。

 カリウム‐アルゴン法による放射年代測定の結果は、本変成作用がおよそ1億4500万年前から5100万年前の間におこったことを示している。かつて、東側に分布する高温型の日高(ひだか)変成帯と対をなすと考えられたことがあるが、神居古潭変成帯のほうが変成年代が古く、この考えは現在では否定されている。

[吉田鎮男・村田明広]

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改訂新版 世界大百科事典 「神居古潭変成帯」の意味・わかりやすい解説

神居古潭変成帯 (かむいこたんへんせいたい)

北海道中央部,神居古潭峡谷を中心に,北は宗谷岬東方から南は三石まで,長さ350kmにわたって分布する変成帯。ソレアイト~アルカリ玄武岩質溶岩,同質ハイアロクラスタイト泥岩チャート石灰岩を源岩とする,角セン岩,緑色片岩,ランセン石片岩,黒色片岩石灰質片岩などの変成岩からなる。ランセン石変成作用と,超マフィック岩類が日本の他の類似の変成帯に比べ広く分布することが特徴である。最近の研究から,海洋性地殻・上部マントル起源と考えられ,変成作用の時期は放射性年代から白亜紀初期と推定される。
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百科事典マイペディア 「神居古潭変成帯」の意味・わかりやすい解説

神居古潭変成帯【かむいこたんへんせいたい】

サハリンから北海道日高地域三石まで細長く分布する,結晶片岩を主とし大量の蛇紋岩をともなう地帯。かつては全体が高圧型の変成作用を受けた変成帯と考えられていたが,その後,低圧の海洋底変成作用やそれほど圧力が高くない変成作用を受けた岩石が発見され,現在では変成帯というよりは蛇紋岩で境された多数のナップ(原地性基盤をおおう異地性岩体)からなる構造帯と考えられている。

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