神野寺(読み)じんやじ

日本歴史地名大系 「神野寺」の解説

神野寺
じんやじ

[現在地名]君津市鹿野山

市域の中央部西端にそびえる鹿野かのう(三八〇メートル)にある。真言宗智山派、鹿野山琳聖院と号し、本尊は薬師如来軍荼利夜叉明王。鹿野山は安房の清澄きよすみ山、総房境ののこぎり山と並ぶ名山として知られる。神野寺のある熊野くまの峰を中心に、東方に白鳥しらとり、西方に春日かすがの峰が連なり、山頂からは関東一円を望む。春日峰の山頂にある一等三角点は、一等三角点測量が始まったときに設置された。堂塔伽藍は山嶺の中央平坦地にあり、高さ九丈六尺の本堂を中心として観音堂・六角堂・鐘楼・経蔵・庫裏・方丈・客殿・宝庫・護摩堂・弁財天堂・奥院飯綱いづな社・高塔・仁王門などが点在する。

寺伝によれば、推古天皇六年聖徳太子創建し、自ら軍荼利像および薬師像を刻して安置したという。天安元年(八五七)円仁が三年を費やして伽藍を再建し、天台宗の道場としたが、天慶年中(八七七―八八五)兵火にかかり堂塔伽藍ことごとく灰燼に帰した。鎌倉期には親鸞が入山したという。応永年中(一三九四―一四二八)鎌倉公方足利氏満が殿堂を修繕、同一〇年には上総国守護上杉氏憲(禅秀)が伽藍を再建したと伝える(延宝六年「神野寺往事記」東京大学史料編纂所蔵、「君津郡誌」)

神野寺
こうのじ

[現在地名]山添村伏拝

神野山の南麓にある。髪生山と号し、真言宗豊山派。本尊薬師如来。江戸末期と推定される由緒書によると天平二年(七三〇)行基による創建と伝える。「三代実録」元慶四年(八八〇)一一月二九日条の陽成天皇が二一寺に遣使した記事中に「神野寺」があり、「焼燈綿、以修功徳」とみえる。当寺所蔵の銅造菩薩半跏像(伝如意輪観音像、国指定重要文化財)は飛鳥様式の古仏であるが、火にかかっている。

神野寺
こうのじ

「八重桜」には、春日山本宮嵩ほんぐうだけの南高嶺に神野寺跡が残るとある。

<資料は省略されています>

「国民郷士記」に「添上郡古市家清原氏舎人親王末孫也舎人所ハ春日山ノ内高峯山ニ有リ」、「大和名所図会」に「高嶽本宮嶽の南にあり、寛文記云三ツ宮あり、舎人親王の姫君此所にて出家し、神野寺と号し住し給ひし其遺跡なり」とある。

神野寺
かんのじ

[現在地名]満濃町神野 神野山

満濃池堤防の南に隣接してある。五穀山と号し、真言宗善通寺派、本尊は薬師如来。四国霊場の番外寺であるが、満濃池の恩恵もあり、四季を通じて順拝者の絶えることがない。弘仁一二年(八二一)に満濃池を修築した空海が、朝廷から与えられた富寿神宝二万を費やして建立したと伝える。その後神野神社とともに矢原氏の勧進を受けて繁栄していたが(「金銅製釣灯籠笠銘」神野神社蔵)、天正一二年(一五八四)長宗我部軍に焼払われたという。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

百科事典マイペディア 「神野寺」の意味・わかりやすい解説

神野寺【じんやじ】

千葉県君津(きみつ)市にある真言宗智山(ちざん)派の寺。本尊は薬師如来と軍荼利夜叉明王(ぐんだりやしゃみょうおう)。聖徳太子創建,円仁(えんにん)中興といい,もと天台宗。永正年中(1504年―1521年)高野山の弘範(こうはん)が入り復興し真言宗に改宗。室町後期建立の表門(四脚門)は重要文化財。現在は鹿野(かの)山嶺中央に1708年佐貫(さぬき)藩主松平勝隆(かつたか)などが用材を寄せて建立した本堂・観音堂などの堂宇が並ぶ。

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デジタル大辞泉プラス 「神野寺」の解説

神野寺

千葉県君津市にある真言宗智山派の寺院。聖徳太子により開山とされる。室町時代後期に建てられた表門は国の重要文化財に指定されている。

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世界大百科事典(旧版)内の神野寺の言及

【山添[村]】より

…西部にある神野(こうの)山(619m)はツツジの名所で,北東中腹には鍋倉渓の奇勝もある。南の山腹にある真言宗神野寺は行基の創建という古刹で,飛鳥様式の銅造菩薩半跏像(重要文化財)が伝わる。村域南部には奈良時代の毛原(けはら)廃寺跡(史)があり,巨大な礎石群が残る。…

【鹿野山】より

…房総三山の一つで,房総丘陵の西端を占め,山頂からの九十九谷の眺望はすばらしい。南房総国定公園に属し,山頂に聖徳太子の創建という神野(じんや)寺と日本武尊を祭る白鳥神社がある。神野寺の本堂は五間四面,入母屋造で県文化財,宝物殿の表門は室町後期の建築で国の重要文化財。…

※「神野寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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