禁煙補助薬(読み)キンエンホジョヤク

デジタル大辞泉 「禁煙補助薬」の意味・読み・例文・類語

きんえん‐ほじょやく【禁煙補助薬】

喫煙習慣を断つために用いられる薬剤ニコチンを含んだガムや貼り薬、喫煙による満足感を抑制する飲み薬などがある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

知恵蔵 「禁煙補助薬」の解説

禁煙補助薬

喫煙者がたばこをやめるのを助ける薬のこと。ニコチンを含むニコチン製剤と、ニコチンを含まず、ニコチンの受容体に作用する非ニコチン製剤がある。
ニコチン製剤には、皮膚に貼るニコチンパッチと、口に含んでかむガムがある。このうち貼り薬は医師の処方を必要とする処方薬で、徐々に体内に取り込むニコチンの量を減らしていくニコチン置換療法に用いられる。主な副作用は、貼付個所の皮膚のかぶれや、頭痛吐き気など。ガムはドラッグストアなどで一般に市販されている。ニコチン製剤を使っている時にたばこを吸うと、ニコチンの過剰摂取で重い副作用が出ることもあるので注意しなければならない。また、妊娠中は、製剤に含まれるニコチンにより胎児奇形が発生する可能性もあるので、使ってはいけない。臨床試験では、ニコチンパッチの使用開始から10週間後の禁煙率は40%強であった。
非ニコチン製剤のバレニクリンは、脳内のα4β2ニコチン受容体に結びついて喫煙時の約半量のドーパミンを分泌させる一方、喫煙時にはニコチンが受容体に結合するのを妨げてその満足感を低下させる。錠剤で、医師による処方箋(せん)が必要。服用中も喫煙はしても良いが、ニコチン製剤との併用は禁じられている。主な副作用は、吐き気、便秘など。臨床試験における3カ月後の禁煙率は約65%と非常に高い成功率を示す。
2006年4月から、診断基準に当てはまる患者に、禁煙外来の届け出をした施設でニコチン依存症の治療を行うことについて、初診から12週間5回目まで医療保険が適用されるようになった。ニコチンへの強い依存性を解消するためには、禁煙補助薬を使った薬物治療と併せて、認知行動療法などを用いた精神面からのアプローチも不可欠とされ、禁煙外来では医師や看護師等によるカウンセリング指導も行われる。禁煙外来が保険適用になった当初は、ニコチン製剤しか承認されていなかったが、08年にバレニクリンが承認された。現在は、ニコチンへの暴露を抑えることができ禁煙効果も高いことから、多くの施設でバレニクリンが第一選択薬となっている。10年10月にたばこが大幅値上げした際には、禁煙希望者が禁煙外来に殺到し、11年1月頃までバレニクリンの欠品状態が続いた。

(石川れい子  ライター / 2010年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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