禁獄(読み)キンゴク

デジタル大辞泉 「禁獄」の意味・読み・例文・類語

きん‐ごく【禁獄】

[名](スル)牢獄拘禁すること。
「地の底の牢舎へ、―せられる身の上となった」〈芥川・きりしとほろ上人伝〉

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精選版 日本国語大辞典 「禁獄」の意味・読み・例文・類語

きん‐ごく【禁獄】

〘名〙
① (━する) 獄中に拘禁すること。
※中右記‐寛治六年(1092)四月一五日「少将顕雅朝臣雑色与検非違使庁下部等有闘乱事、各被禁獄云々」
明治時代刑法国事犯やそれに準ずる犯人を刑務所内に拘禁して、定役に服させないもの。重禁獄と軽禁獄とがある。禁錮刑。〔刑法(明治一三年)(1880)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「禁獄」の意味・わかりやすい解説

禁獄 (きんごく)

囚人を獄に拘禁しておくこと。律令制下における刑罰は笞・杖・徒・流・死の五罪(刑)であって,禁獄自体は刑名ではない。囚人の逃亡防止などを目的としたもので現行刑法の拘禁に近い。取扱いが比較的緩やかな散禁と,刑具を用いて身体の自由を束縛する禁固の2種があった。重罪の者を特別に長期間禁獄しておくことを長禁といい,別勅による長禁と,八虐罪を犯して死罪になるべきところを死を免じて長禁になった囚人に対しては大赦が適用されなかった。囚人の拘禁については囚獄司がつかさどり,囚禁については獄令に規定がある。獄は左右獄が設けられていたが,諸王や官人を散禁するときには獄ではなく授刀寮や左右兵衛,衛士府等も利用された。平安時代には原則として死刑は実施されなかったといわれ,囚人を獄につなぐことに刑罰の重点がおかれたためか,禁獄という語自体が一種の刑罰を意味するようになる。平安京の治安にあたった検非違使庁では,殺人犯に対して死刑を行わずに身柄を禁獄し,また笞・杖罪の者に対してもこれを実施せずに禁獄にすることが〈使庁の積習〉〈例〉として確立していた。

 鎌倉幕府以降の武家政権においても禁獄は刑名として用いられた。鎌倉幕府法の中には,他人を打擲した凡下(ぼんげ)(一般人)身分の輩は60日間禁獄するというように囚禁日数を明記したものもある。江戸幕府も禁獄を刑罰としていたが,名称は過怠牢(有期)と永牢(終身刑)を内容とする入牢(にゆうろう)という語に変化した。明治時代には,1880年(明治13)7月公布の刑法に禁獄が懲役とならぶ主刑として規定されていたが,1907年廃止された。ただし禁獄の名称は,現行刑法における有期禁錮に相当する重禁獄として存続した。現行刑法中には禁獄という刑はない。
禁錮 →牢屋
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百科事典マイペディア 「禁獄」の意味・わかりやすい解説

禁獄【きんごく】

獄に拘禁することをいい,のちには獄以外の場所への拘禁をも含む拘禁刑一般を指した。律の刑罰には含まれない。だが裁判手続中の拘留や刑執行までの拘禁など,他の刑罰に付随して行われ,また死罪を免ぜられた者を長期間拘禁する〈長禁(ちょうきん)〉も行われて,平安時代以降庁例(ちょうれい)として刑罰となった。鎌倉時代には拘禁刑は禁獄のほか,〈召籠(めしこめ)〉〈召禁(めしきんじ)〉〈召預(めしあずけ)〉などと呼ばれ,必ずしも獄への拘禁を意味しなかった。江戸時代にも刑罰として継承され,過怠牢(有期限)と永牢(終身刑)からなる入牢(にゅうろう)へと名称が替わった。1880年公布の刑法でも懲役とならぶ主刑と規定されたが,1907年廃止された。
→関連項目引廻し

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「禁獄」の意味・わかりやすい解説

禁獄
きんごく

鎌倉,室町時代に行われた自由刑の一種。召禁,召籠とも称せられた。平安末期においては,この語は広く未決,既決の囚を獄に禁ずるという意味に使用されていた。しかし,それは鎌倉期にいたって,刑の名称の一つとなり,『御成敗式目』ならびにその追加によれば,この刑は,悪口その他種々の犯罪に科されることになっている。また,明治初期の刑法典である『改定律例』中,閏刑の刑名として掲げられている「禁錮」が,1874年に「禁獄」と改められその後この名称は,82年施行の旧刑法においても重罪の主刑中に重禁獄・軽禁獄として取入れられている。現行刑法では不採用。

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普及版 字通 「禁獄」の読み・字形・画数・意味

【禁獄】きんごく

投獄。

字通「禁」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の禁獄の言及

【牢屋】より

…獄卒の違法行為を取り締まるため,弾正台官人が巡検することになっていたが,獄囚らは劣悪な条件下に置かれていた。【森田 悌】 鎌倉幕府で既決・未決の囚人を拘禁することを禁獄,召禁,召籠というから,拘禁するための獄舎,籠(牢)舎があったはずだが,その実態は不明である。公家,僧侶,御家人に対しては,しかるべき御家人あるいは守護などに囚人を召し預ける(預け置く)方法がとられるから,獄舎があるとすれば御家人身分にならない侍や一般庶民や下人等を対象としたものであろうか。…

※「禁獄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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