福井[県](読み)ふくい

百科事典マイペディア 「福井[県]」の意味・わかりやすい解説

福井[県]【ふくい】

中部地方北西部,日本海に面する県。県庁所在地は福井市。4190.49km2。80万6314人(2010)。〔沿革〕 かつての越前国若狭国の2国にあたり,越前中世末,守護の朝倉敏景足羽(あすわ)郡一乗谷によって治めた。蓮如以後真宗の勢力伸張も著しく,各地に一向一揆(いっき)が起こった。1575年の柴田勝家による北庄城経営以来城下町福井が中心となり,江戸期には松平氏の福井藩など数藩に分かれた。若狭は中世は守護の武田氏ら,江戸期は酒井氏の領であった。1871年越前の大半が福井県,若狭は敦賀(つるが)県となり,1881年両県が合して福井県となった。〔自然〕 地形上,敦賀市北東方の木ノ芽峠を境に東の越前地域(嶺北(れいほく)),西の若狭地域(嶺南)に分かれる。嶺北は標高1200m内外の両白山地が広がり,九頭竜(くずりゅう)川およびその支流の日野川,足羽川が流れて,大野,武生(たけふ)の盆地と福井平野を形成する。海岸部は北部に加越台地と三里浜の砂丘地があり,南部の干飯(かれい)崎以南は典型的断層海岸である。嶺南は若狭湾に面し,リアス海岸で出入に富み,中央部に三方五湖がある。滋賀との県境野坂山地で南北方向の断層線が多く,断層谷は日本海岸と京畿を結ぶ重要な交通路となっている。日本海側の気候区に属し,降水量が多い。嶺北は深雪地帯であるが,嶺南は北陸から山陰に移る地域で,雪は少ない。〔産業〕 産業別人口構成は第1次4.7%,第2次33.1%,第3次61.5%(2005)。水田率は高く(91.0%,2003),福井平野を中心に北陸水稲単作地帯をなす。畑地,樹園地は少ないが,三里浜砂丘のラッキョウ,若狭地方のキャベツ,三方のウメ,越前岬一帯のスイセンなどの特産も知られる。水産業は沿岸沖合漁業を中心に活発で,アジ,サバ,ブリなどの回遊魚,カニ,タラ,カレイ,スルメイカを多く漁獲,近年は若狭湾内でのウニ,フグ,カキなどの養殖も盛ん。鉱業では鉛,亜鉛の中竜鉱山が1987年閉山,南条郡,三方郡で白ケイ石,炉材ケイ石を産する。工業では県の製造品出荷額は1兆7476億円(2003)で北陸4県でも4位であるが,繊維・電気機器・化学・木材工業が盛んである。特に嶺北を中心に明治以降発展,繊維王国といわれてきた繊維工業では,絹・人絹・合成繊維織物を多産,主産地は福井・鯖江・大野・勝山・坂井の各市,永平寺町(旧松岡町)である。化学工業は越前市(旧武生市)の石灰窒素,ビニル,セロハン,敦賀のセメント,硫酸などがある。越前市(旧武生市)の打刃物,鯖江市の漆器と眼鏡わく,越前市(旧今立町)の和紙,小浜市のメノウ細工と漆器なども有名。交通幹線に遠く資源にも恵まれない若狭湾沿岸には10基以上の原子力発電所が密集し,京阪神へ電力を供給している。白山国立公園,越前加賀海岸・若狭湾の2国定公園があり,芦原(あわら)温泉,東尋坊永平寺六呂師ヶ原など観光地が多い。〔交通〕 北陸本線と小浜線,国道8,27号線,北陸自動車道が幹線で,福井市から大野市方面へ越美北線が通じ,福井市を中心にえちぜん鉄道,福井鉄道の各線が通じる。福井市東隣の春江町(現・坂井市)に1966年,福井空港が開港した。しかし,1976年に定期便が廃止され,2006年には空港の管制業務が中部国際空港からの遠隔管制となり事実上休止状態。現在は小型機やグライダースポーツの訓練に利用されている。苫小牧などへ長距離大型フェリーが通じる敦賀港は重要港湾に指定され,海運の一中心である。
→関連項目中部地方

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