福島原発の汚染水漏れ(読み)ふくしまげんぱつのおせんすいもれ

知恵蔵 「福島原発の汚染水漏れ」の解説

福島原発の汚染水漏れ

福島第一原子力発電所に貯留されていた放射能汚染水が地下または海洋に大量流出した事件。2013年に地下貯水槽及び地上タンクから数百トンの汚染水が漏れ出ていることが発覚。11年に起きた国際原子力事象評価尺度(INES)レベル7(最悪)の原子炉本体の事故に加え、本件もレベル3の重大な異常事象となった。垂れ流された放射性物質は大量で、放射線量は数十兆ベクレルに上る。
11年3月の福島原発事故の後、炉心冷却のために大量の海水などが臨時に注水された。また、原発敷地内には日量1000トンの地下水が流れている。これらの一部が建屋に流れ込んで汚染水と混ざる。こうして福島原発には放射能に汚染された膨大な量の水が生じ、海洋汚染が懸念された。その対策として、土を凍らせて地下水脈を遮断したり水ガラスを浸潤させた壁で汚染水の流出を防いだりするなどの方策が検討されているが、現在、汚染水は常時くみ上げて敷地内に設営された貯水槽やタンクに貯留している。1000基にも上る地上タンクは、工期工費を削減するために、継ぎ目を溶接せずにボルトで締めただけのフランジ式が多く採用された。また、タンクの不足を補うために建設された地下貯水槽は、施工業者らが「コイを飼う庭の池」などと言うような防水シートを敷き詰めたものだった。
本来、貯水槽は多核種除去装置ALPS(アルプス)によって、トリチウム(3重水素)以外の放射性物質を大幅に取り除いた低濃度汚染水を貯蔵するものだった。ところが、装置の欠陥などからALPSは予定通り稼働できなかった。その結果、貯水槽にも高濃度汚染水が流し込まれた。
13年4月には貯水槽から100トンを超える汚染水が漏れ出していることが見つかった。このため、貯水槽を廃止し、汚染水はタンクに移送されることになった。ところが同年8月には、今度はタンクから約300トンの汚染水が漏れていることが発覚、重大な事故であることが判明した。
この事態に、政府は470億円の国費を投入し対策を進めるという。なお、安倍首相は2020年東京オリンピック招致にあたり、「汚染水はブロックされ、状況はコントロールされている」などとプレゼンテーションを行った。しかし、漏れ出した汚染水は排水溝に沿って外洋に流出しており、港湾内も完全にブロックされているわけではなく海水が行き来している。

(金谷俊秀  ライター / 2013年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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