私領(読み)シリョウ

デジタル大辞泉 「私領」の意味・読み・例文・類語

し‐りょう〔‐リヤウ〕【私領】

古代中世、地方官人や有力農民などの個人所有地私有地。⇔公領
江戸時代幕府直轄地に対して、大名旗本御家人領地

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精選版 日本国語大辞典 「私領」の意味・読み・例文・類語

し‐りょう ‥リャウ【私領】

〘名〙
① 自分の領地。個人の領分国家、共同体などの支配下に属すべき公領に対して、所有者の売買、譲与、寄進など自由な処分が容認されている所領。ただし、所当官物など国家、上級権力に対する義務は必ずしも免除されてはいない。また中世では、特に幕府、朝廷などから近来給与された恩領に対して、古くから数代にわたって領有が容認されてきた根本私領をいうことが多い。本領。⇔公領。〔東南院文書‐天徳四年(960)一二月二七日・太政官牒
平家(13C前)一〇「庄園私領一所も相違あるべからず、并に大納言になしかへさるべきよし」
御料所に対して、大小名の領地。
随筆・折たく柴の記(1716頃)下「此獄はもと大名の御料・私領百五十三ケ村のもの共の訴申す事あるによりて」

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「私領」の解説

私領
しりょう

10世紀以降の国衙(こくが)による公領・公田支配のもとでの個人の領地。律令制下の私田とは異なり,地子(じし)や加地子などの得分権を私領主が確保した領地であり,免田からなる荘園も私領の一形態。国衙は原則として私領の存在を認めなかったが,私領主が荒廃公田の再開発などを契機に,郡や郷の支配権をえることによって,その私領は公領(国衙領)を構成するものに転化した。また私領が権門寺社などへ寄進された場合は国免荘(こくめんのしょう)や領域型荘園に転化した。鎌倉時代の御家人の本領も私領とよばれた。

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世界大百科事典(旧版)内の私領の言及

【所領】より

…中世の地主・領主が私有する財産としての土地の総称。私領ともいわれる。古代律令制のもとに存在した家地,園地,墾田,私田などの〈私地〉をその起源とする。…

【幕藩体制】より

…こうして,公儀,身分制,鎖国,賤民制は連動してほぼ同じ時期に成立した。
[支配機構]
 幕藩体制の下では,一部の寺社・朝廷領を別とすれば全国の土地,人民は御料,私領に区分された。御料は幕府直轄領(天領)であり,佐渡,足尾,石見などの主要鉱山や,大坂,京都,江戸,長崎などの主要都市もその中に含まれていた。…

【本領】より

…中世在地領主の所領のうち開発相伝の根本私領をいう。鎌倉幕府法の解説書《沙汰未練書》は本領を定義して,〈本領とは開発領主として代々武家御下文(くだしぶみ)を賜る所領田畠(しよりようでんぱく)等の事なり。…

【領主】より

…本所・領家たる権門貴族に属さず,国衙の公権力にも頼ることなく,私的に田・畠の領有をおこなっていた地方・民間の人々であった。これを特に称して私領主という。また,その領有する土地を私領という。…

※「私領」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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