秘伝(読み)ひでん

精選版 日本国語大辞典 「秘伝」の意味・読み・例文・類語

ひ‐でん【秘伝】

〘名〙 秘密にして、たやすく人に伝えないこと。また、そのもの。奥義
至花道(1420)体「この外は、問人の気量分力によりて、相対ての秘伝なるべし」

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デジタル大辞泉 「秘伝」の意味・読み・例文・類語

ひ‐でん【秘伝】

秘密にして、特別の人にだけ伝授すること。また、その事柄。「秘伝を授ける」
[補説]書名別項。→秘伝
[類語]奥義極意神髄

ひでん【秘伝】[書名]

高橋治小説。巨大魚イシナギを釣り上げようとする二人の釣り人の姿を描く。昭和58年(1983)発表同年、第90回直木賞受賞。

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改訂新版 世界大百科事典 「秘伝」の意味・わかりやすい解説

秘伝 (ひでん)

伝授関係において相伝される内容が特別のものであることを示す用語,またその伝授の方法をいう。すでに奈良・平安期以来の仏教教学や学問諸道の家学にみられ,室町末の《日葡辞書》には〈かくし伝ゆる,すなわち隠(かく)いて教ゆる,こっそりと教えること〉と語釈がみえる。類義語に秘事口伝,秘説,密伝,奥説などがある。上の教学,家学から茶道花道武道など芸能諸分野に至る教育と練習はおのおの固有の形式に習熟することを基礎として〈稽古〉が重視される。秘伝はこの稽古の最終的段階で伝授されるものである。このような段階的教育は,伝授される内容は受け手のしかるべき成長の段階に応じて伝えられるべきであるとする立場にもとづくもので,その判断は特定の教授者の専断にゆだねられる。また評価と伝授の証明は書証によるのを原則とする。この専断性と書証性とが秘伝形式の特徴である。証明は仏教教学の例にならって〈印可〉とよばれることがある。たとえば近世初頭の茶湯書《山上宗二記(やまのうえそうじき)》に〈茶湯ノ習ニ十年芸古ノ後印可ヲ出ス時,小壺ノ茶ノ建様相伝也,大事トモ面白コト此内ニ在リ〉とみえる。こうした伝授形式が長い時代にわたって継承された結果,ある種の共通観念が定着したことが認められる。つまり,かつてブルーノ・タウトが日本建築の〈釣合い〉感覚を論じて,〈様式・形式の世界あるいは基本的定型を数世紀にわたって追究するという連続的な仕事によって成就される〉とのべたような,技術に関する基本的観念が人々の間に生まれ定着するのである。秘伝形式を核とする教育関係と家元制度は大なり小なりこの観念によって支持され,その実態がこの観念を再生強化してきたといえる。また,結果よりも過程をたいせつにする,いわば稽古の思想とよぶべき考え方もこれに属するであろう。秘伝形式は,しかし,その専断性と書証性に淵源する著しい秘密主義と権威主義に陥りがちな負性を併せ持つために,その閉鎖的性格が批判されることが少なくない。
口伝(くでん)
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デジタル大辞泉プラス 「秘伝」の解説

秘伝

岩手県で生産されるエダマメ。白毛大莢、濃淡色の青豆で、食味は極めて良好。茹でて食するほか、味噌や豆腐などにも加工される。

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普及版 字通 「秘伝」の読み・字形・画数・意味

【秘伝】ひでん

奥儀。

字通「秘」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の秘伝の言及

【許物】より

…許物の曲や段階は流儀や流派によって違いがある。芸能の伝授には,伝統的に秘事観念があり,技芸の相伝は特殊能力の分与と考えることから,極意,奥義,秘儀,秘技,秘伝,秘曲などという性格が生じ,これが許物の制度となった。近世以降家元制度(家元)が発達したことから,家元は秘事・秘伝に関する相伝権(免許権)を独占管理するようになり,家元に伝授料を支払って免許状を受ける。…

※「秘伝」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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