精選版 日本国語大辞典 「稗史」の意味・読み・例文・類語
はい‐し【稗史】
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中国で物語や民間の言い伝えを記録した文芸をいう。それが稗と呼ばれるのは,《漢書》芸文志に〈小説家の一派は,思うに稗官から出た〉とあり,〈街談巷説,道聴塗説〉を記録して小説が作られたとあるのによる。稗はヒエなどの穀物であるが,注によれば,こまごまとした小さな話を記録するから稗官というのだとも,その官職自体が小さいのでそう呼ばれたのだともいう。雲夢(うんぼう)出土の秦簡の中に稗官の語が見え,実際にそうした官があったことが確かめられるが,その職務が民間説話の採集と結びついていたかどうかは,なお不明である。ちなみに小説的文芸の起源を官による民間の物語の採集に置くのは,《詩経》の成立を採詩の官による民間歌謡の採集に求めようとするのと同じ観念に出るものである。後世《稗史集伝》や《稗海》など小説的な作品を集めた書物や叢書の名に〈稗〉の字が冠せられるのも,こうした縁故による。
→小説
執筆者:小南 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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