日本大百科全書(ニッポニカ) 「稲垣稔次郎」の意味・わかりやすい解説
稲垣稔次郎
いながきとしじろう
(1902―1963)
重要無形文化財型絵染め保持者、京都市立美術大学(現京都芸大)教授。当初糊描(のりかき)の作品を試みたが、とくにその名声を高めたのは、1948年(昭和23)46歳の春以来発表を続けた型染めである。その作品は、京都やその周辺の風物や諸行事をテーマとし、作調はまことに典雅で、型染めのもつ量産性よりも芸術的特質に重きを置き、数枚の型紙あるいはその表裏を巧みに駆使して防染糊(のり)を置き、色挿(ざし)している。とくに型紙彫刻の隘路(あいろ)とされる「吊(つ)り」を巧みに模様のなかに溶け込ませているのは、その非凡な意匠力と技をうかがわせる。
[杉原信彦]
『乾由明編『稲垣稔次郎作品集』(1966・光琳社)』