穢土(読み)エド

デジタル大辞泉 「穢土」の意味・読み・例文・類語

え‐ど〔ヱ‐〕【×穢土】

仏語。けがれた国土。迷いから抜けられない衆生しゅじょうの住むこの世。現世娑婆しゃば穢国。「厭離えんり穢土欣求ごんぐ浄土」⇔浄土
大便くそ
四条の北なる小路に―をまる」〈宇治拾遺・二〉

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精選版 日本国語大辞典 「穢土」の意味・読み・例文・類語

え‐ど ヱ‥【穢土】

〘名〙
① 仏語。煩悩にけがれたものが住む迷いの世界。凡夫の住む娑婆(しゃば)世界。娑婆。穢国。三界。六道。⇔浄土(じょうど)
万葉(8C後)五・七九四・右詩「従来厭離此穢土、本願託生彼浄刹
梁塵秘抄(1179頃)二「釈迦の説法聴きにとて、東方浄妙国土より、普賢(ふげん)文殊(もんじゅ)は獅子象に乗り、娑婆のゑどにぞ出でたまふ」 〔浄土論註‐上〕
② 「くそ(糞)」の異名
※宇治拾遺(1221頃)二「さて出(いで)てゆく程に、四条の北なる小路にゑどをまる」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「穢土」の意味・わかりやすい解説

穢土
えど

穢(けがれ)に満ちた不浄な世界のこと。仏教では、それはわれわれの住むこの人間世界を含んだ三界六道(さんがいりくどう)すなわち娑婆(しゃば)世界をいう。仏教は本来、徹底した厭世(えんせい)観にたち、世俗の世界を否定的に考え、涅槃(ねはん)の境地を理想とした。このような現実否定の立場は、大乗仏教、とくに浄土思想において、苦悩や矛盾に満ちた現実の世界を否定し、厭(いと)い、安楽に満ちた理想的な別の世界(浄土)を求めるという思想に発展した。源信の『往生要集』には「厭離穢土(おんりえど)、欣求浄土(ごんぐじょうど)」という表現でその思想が説かれている。

[辛嶋静志]

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普及版 字通 「穢土」の読み・字形・画数・意味

【穢土】えど

俗悪な現世。

字通「穢」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「穢土」の意味・わかりやすい解説

穢土
えど

浄土」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の穢土の言及

【往生】より

…奈良時代における極楽往生観は死者に対して縁者がその冥福を祈り,死者が極楽浄土に往生することを願うという,追善的な性格を有するものであった。平安時代中・末期に至って,律令体制の動揺から生じた社会秩序の混乱に,末法思想による末世の到来という精神的不安が重なって,人々は現世を穢土(えど)(穢れた国土)と観ずるようになり,来世に安らぎを求めるようになっていった。死者の追善ではなく,自身が極楽に往生できることを願ったのである。…

【浄土】より

…清浄な国土という意味で,菩薩として衆生を救済せんという誓願を立てて悟りに達した仏陀が住む清浄な国土のことであり,煩悩(ぼんのう)でけがれた凡夫の住む穢土(えど)つまり現実のこの世界に対比していう。浄土は大乗仏教における宗教的理想郷を指す言葉としても広く用いられたが,阿弥陀仏の信仰が鼓吹され流行するにつれて,阿弥陀仏の仏国土である極楽と同一視され,ついには同義語となる。…

※「穢土」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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